◇6


沢山あるチョコの山に、迷うひなちゃん。
どれくらいのチョコが必要なのかと思い、何人にあげるのかを尋ねると、

「こーくんと、なりと…」

って、小さな指で数えながら名前を挙げてる姿はとても可愛らしくて、微笑ましく思い自分も思わず笑顔になるのがわかった。

ん?だけど、なんだかその中に引っかかる名前があった。あれ?と思いながら、意識をらひなちゃんに戻す。

「10個やね。」

今聞いた名前は、ざっと10人。2、3人かと思っていたが意外と多かった。だとすると、予算を聞かないと。すると、ひなちゃんから返った答えは、

………1000円か。バレンタインのチョコにもお手頃な安めのチョコはもちろんある。だけど、10個…。さすがにキツイかなぁ…。正直、そう思う。でも、一人でこんな所まで皆にチョコあげたくて来たひなちゃんを見ていたら、悲しませたくなくて。中でも、安くて可愛いの…と、探してはみたけど、それでも1個150円が限界。

しょうがない。残りは僕が出すしかないな。そう思い苦笑して、その選んだチョコをひなちゃんに見せて、

「こんなの、どうかな?」

「あい」

僕の選んだチョコを見て嬉しそうに頷くひなちゃん。じゃあと、ひなちゃんにはちょっと待っててもらって、急いでレジに向かう。

バレンタインのレジは忙しそうやし、自分で包装までしてまた急いでひなちゃんの元へ戻った。

10個のチョコの袋をひなちゃんに渡してお金を受取る。
渡したチョコが入った大きな袋を大事そうに抱えて満足そうに微笑むひなちゃんを見て、

うん。良い仕事をしたわ!と。僕も、心が温まり満足した。

出口まで見送ると、

「ありがとうございました。」

と、お辞儀をしてふにゃりと笑いかけられ、改めて可愛いなぁと思う。

「皆、喜んでくれるといいね。」

気付けばひなちゃんの頭を撫でていた。

それに、目を細め嬉しそうなひなちゃんは、どこか小動物っぽかった。

「ばいばぁい」

少し名残惜しいけど、ひなちゃんのその言葉に僕も手を振った。

そうしてひなちゃんとサヨナラをすると、慌てたように、ひなちゃんを陰から見守ってた彼がやってきて、慌ただしく僕にお礼を言うとひなちゃんを追いかけて行った。

あ、居たな。そういえば、彼が。

ふふ

ひなちゃんか…

なんだか、ひなちゃんを見て懐かしい昔馴染みの彼を思い出してしまう。思い出したら無性に逢いたくなった。

仕事中だけど…。陰に入り携帯を取り出すと、懐かしい番号へ。

プルルルル…

ガチャ

【はい?なんや○○!?久しぶりやん!】

懐かしい地元の訛りと心地よく響く声。

「○○くん元気?僕、今東京やねん。うん、転勤!」

【え〜!そうなん?いつからなん?】

「ふふ、実は今日から(笑)」

【マジで?】

「マジやねん」

電話ごしに聞こえる昔馴染みからのテンポよい会話。何年ぶりやっていうのに、なんの違和感もない安心した空気…。

【今日、何時あがり?】

「ん?19時かな?」

【逢おうや!】

「いいの?△△くんは?」

【んふふ、知らん!○○に逢いたい♪】

「じゃぁ…喜んで!」

【うん、楽しみやなぁ〜♪】

うん、本当にそう思う。

お互い仕事中だからと、手短かに待ち合わせを告げ通話を終わらせた。

電話の彼と、今日出会った小さな子供。

年齢も見た目も全然似ていないのに、どこか同じ空気を感じる。そんな2人。

ひなちゃんにもまた逢いたいな。

と、こっそりそんな事を思いながら仕事に戻った。



fin



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