◇5


□おまけ□
《店員視点》

「すいません!」

デパートの売り場を回る僕に、1人のお客さんが焦ったように話かけてきた。

「はい?」

「あの、あそこに可愛い男の子いるでしょ?」

えっ?
いきなり、なんなん?この人?怪しい人なんちゃう?一瞬、そんな事を思ってしまったけど、そこはぐっとこらえた。

うん。悪い人には見えんしな。そうは思うが、

「あー、あー、泣いちゃう泣いちゃう!?」

話しかけたこちらの存在を忘れているかのように、一人焦っりながら、何が言いたいんだか解らへん…。すっごい、変な人。
そんな印象を持った。けど、こんな人でもお客さんや。まずは、ちょっと落ち着こうや。

「あの…、落ち着いて。あの子がどうかしたんですか?」

とりあえず、何が言いたいんかを聞かんとあかんと思った僕は目の前の、普通にしていれば、オシャレで結構なイケメンなのに、なんだか残念な彼にそう言った。

そしたら、それを聞いてハッと分かりやすく驚いて見せた彼。

「あ!そうだよ。そう!あのね、今あの子の後を着けて…、あい…、や、心配で…一人でお使いが…」

何言ってるのかさっぱり解らないんやけど…
。しかも、今、後を着けてとか言いかけんかったか?やっぱり、怪しい人?警備員を呼んだ方がいいんやろか?

そんな僕の胡乱げな視線に気付いたのか、さらに慌てて、

「いや、違うの!違うから!俺、怪しくないから!」

自分で言っちゃったよ、この人。ま、確かに、言動なんかはかなり不審だけど、人当たりは良さそうやし、必死さ加減が悪い人な感じはせんね。単純に、焦っているだけ。そんな感じや。

よくよく考えて、彼の言葉や仕草を纏めると…、一人でお使いに来た男の子が心配で、見守ってるってとこなんかな?

そんなとこやろ。と、あたりをつけて、

「あの子、一人でお使いに来たんですか?」

彼の視線の先。そちらに目を向けると、確かに、可愛らしい、6歳?7歳?くらいの男の子が、1人で不安そうにきょろきょろと辺りを見渡している姿が目に入った。

「そうそう!多分、今どこ行けばいいか解らなくて、不安で泣きそうになってるの。行って助けたいけど、そしたら着いてきたのバレちゃうし…。」


そう言ってオロオロ焦る彼の方が泣きそうになってる。はぁ、しょうがない。

「じゃあ、僕がお手伝いしましょうか?」

ふふ、初めてのお使いか。なんて思いながら、なんの気まぐれか。そんな事を提案していた。これも、店員としての仕事や。その僕の一言に彼が安心したのを見て、男の子に視線を移して、こちらも早く安心させてあげようと側へと近付いた。さて、どうしたもんかな?

「僕?どうしたん?」

お客様に関西弁は、ほんまはあかんのやろうけど、子供さんやし、下手に標準語わ使うより仲良くなれるかな?と、やんわり声をかければ、

「……っ」

思っていたよりも心細かったのか、少し涙目の男の子が僕を見上げた。

可愛い子やな…。それと、なんやろ?この既視感。 懐かしい。目の前の男の子を見ていると、地元で仲良くしていた幼馴染の先輩を思い出した。大きな印象的な目をした、笑顔が可愛いらしくて癒し系の。とても目立つ誰からも愛されているような人やった。

容姿は特に似ていないのだが、どこか雰囲気が似ている。特に一緒に居るだけで癒やされる。そんな所がとても似ている。

名前を聞けば、たかなし ひなくんというらしい。
ひなちゃんか。

「ひなちゃんは、どこに行きたいんかな?」

目線わ合わせ優しく聞いて見れば、チョコを探してるんやって。可愛い、花の咲くような笑顔で嬉しそうに、大好きな人にあげたいって言う小さなひなちゃんの、そんな気持ちがいじらしい。こちらまで、胸がポカポカ暖かくなるような、そんな感じに思わず笑顔になっていた。お手伝いしてあげたい。心からそう思う。

「僕が案内してあげるね。」

小さなひなちゃんの手を握り、一緒に【valentineコーナー】に向かった。


途中、

「一人でお使いなんて、偉いんやね。」

って言ってあげると、

「んふふ」

って嬉しそうにハニカみ笑う姿がやっぱり、あの人に似てるんやけど。改めてそう思う。

元気かなぁ。ひと足先に、地元から東京へと上京した彼。随分会ってなくて、久しぶりに連絡を取ろうか?そんな事を思ってるうちに、いつの間にか目的地に着いていた。




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