《紅葉探偵の報告日誌》
やっほー!羽柴だよー。
今日はね、俺、探偵なんだよね。へへへ。
ん?何のって?
ふふふん!じゃっじゃじゃ〜ん!
ほら、見て見て。目の前に可愛い可愛い、男の子がいるでしょ!
そう、雛ちゃん。もう、きょろきょろあっち見たりこっち見たり、忙しいよね。興味津々って感じ。
でね。なんかさ、洸ちゃんが昨日切羽詰まったように俺に電話をしてきたの。な〜んか嫌な予感がしたわけ。いや?嫌な予感っていうかね、ま〜たこの人、俺に頼み事してくるなって。うん。もう毎回だから、いい加減わかるよね。
* * *
「羽柴ちゃん、明日休みでしょ!そうだよね!ヒマでしょ!ヒマだよね!そんなヒマな羽柴ちゃんに、お願いがあるんだよ!聞いてくれるよね!」
…なんだろ?今日の洸ちゃん、いつにも増して、失礼で強引じゃない?どうせまた、雛ちゃん関係で、預かって欲しいとかだろうから、俺としては大歓迎なんだけど…なんだか腑に落ちない…。
なんて思っていたら案の定、
「雛くんが一人でお留守番したいって言うんだ。危ないって何度言い聞かせても、大丈夫って言ってきかないんだよ…。雛くんなりに思う所があると思うんだけど、一人で留守番だなんて、急に言い出すのには絶対何かある。俺の第六感がそう告げてるんだよ!だから、心配だからちょっと羽柴ちゃん、陰から雛くんの事見張っててくれない?」
…………は?え?いやいや、陰からって何?どうすんの?って話だよ。
「朝早く、家来て!それで隠れて雛くんをしっかり見てて!ただし、雛くんは1人でできるもん!とか言って異様に気合いが入ってるから、くれぐれも絶対にバレないようにしてね!羽柴ちゃん、ついうっかりが多いから心配なんだよね…」
と、ノンブレスで言い切ったけど。…何なの、それ?誰得?しかも!随分失礼な事を当たり前に言ったよね。さすがに黙ってられなくて何か一言言ってやろうと口を開こうとする前に、目の前の雛バカさんは、休まず更に言葉を続けてきた。
「あれは、絶対何かしようとしてると思うんだ。目がヤル気なんだ!1人で外行っちゃうかもしれないから本当に心配…。あ〜、本当なら、羽柴ちゃんなんかにお願いしないで、俺が見張りたいくらいだよ!でも、明日は無理なんだ。抜けられない大事な会議があるんだ。だから羽柴ちゃんなんかに頼むしかないんだからね!頼んだよ羽柴ちゃん!」
ねぇ…、
絶対に洸ちゃんさ、俺の事、お人好しなヒマ人だと思ってるよね?今、突っ込みどころが満載だったよ?本来、俺、怒っていいよね?断るって選択肢残されてないようだけど…無視しちゃってもいいんじゃないの?これ。
……ま、いいけどさ。
あ〜〜。俺って、本当にお人好しなヒマ人なんだな…。なんだか、悲しくなってきたよ。
* * *
そんな過保護MAXな洸ちゃんの理不尽過ぎる頼みに、バカ正直にもせっかくの休日返上で早起きをした俺は、乗りかかった船だと諦め、コソコソと雛ちゃんに見つからないよう洸ちゃんの家に隠れてた訳。
しばらくは退屈でした。だって、何をする事も出来ず、ただ雛ちゃんを見てるだけ〜なんだよ〜!ううう…叫びたいよ〜!もう、フラストレーション溜まりまくりだよ。
そんな風に思いながら、雛ちゃんを見ていたら、
あっ!
いつの間にやら、雛ちゃんはお出かけに必ず持ってくお気に入りのお魚さんリュックを背中にしょっていました。
すごいよ、洸ちゃん!大当たりだよ!雛ちゃん1人でお出かけする気だよ〜!
うわーうわーと、そんな事を考えてるうちに
バタン
と、俺の耳に玄関のドアの閉まる音が聞こえました。
ハッ!
雛ちゃん、本当に1人で行っちゃったじゃん!
マズイ!マズイ!
呆気に取られていた俺も慌てて、雛ちゃんの後を追いかけた。
そうして、今現在。
ぽてぽて楽しそうに前を歩く雛ちゃん。コソコソ後を着いてく俺…。なんか…、探偵改め”はじめてのおつかい”の変装スタッフみたいだな〜、なんて。見つからないように、隠れながら。
気分は、”はじめてのおつかい”
らんららんらんらーっ♪
と、某番組のテーマ曲が頭に流れ、一人雰囲気に悦に入り込み、だんだん楽しくなってきました〜。
そして、着いた先は、デパートでした〜!
って、え?デパート?何の用なんだろ?欲しい物があるのかな?言えば、買ってあげるのに…。
キョロキョロと、周りを見渡す雛ちゃん。人混みと、1人ぼっちに不安になっちゃったのか、あーーっ!泣きそうになってる!!すぐにでも行って、頭撫で撫でして抱きしめてあげたいんだけど、あー、どうしよう。困った困った〜!
とオロオロしていたら、デパートの店員さんが側を通ったから、勢いよくその店員さんの腕を掴み、訳を説明して雛ちゃんに声をかけて貰うように頼んだ。
店員さんは、そんな俺の急なお願いにも快く頷いて、雛ちゃんの側に行くと、雛ちゃんの目線にしゃがみこんで、一言二言話かけている。それをハラハラしながら見ている俺。
すると、ちょっぴり不安で泣きそうだった雛ちゃんの顔が、パアッと笑顔に変わる。
あ〜。良かった、良かった。
そのまま2人は手を繋いで、何やら何処かに向かったようだ。
あっ!
俺も行かなきゃ!慌てて俺も、見つからないよう後から着いて行った。置いてかないで〜。
そして、着いた所はなんと!
【valentineコーナー】
えっ?もしかして?そっか。雛ちゃん…
なんとなく、雛ちゃんが一人でにこだわってここまでやって来た目的が解ったような気がした。