あ〜ぁ…。
さっきまでの深刻だった雰囲気が一変。このままじゃ、盛り上がりすぎて事まで進みそうだね。バカップルうぜぇ。
「はいはい、俺の存在忘れないでね!ついでに、ここ俺んちだから。」
どっちも完全に忘れちゃってるだろ、お前ら。そう少し大きめの声をかけると、芽以が慌てて廉慈を突き飛ばした。お?顔が真っ赤になっちゃって、可愛いね。突き飛ばされた廉慈は、甘い雰囲気に油断していたのか、思いの他弾みがついて転がっていた。その姿が間抜けで、なんか笑える。
「ぅぅ…//りょ、りょぉ」
「うん、何?芽以。」
「ひ、ヒドイよ、芽以ちゃん!」
慌てて身体を起こした廉慈は、なんとも情けない声で非難しているが、無視だな無視。泣いた目元を赤くしながらウルウル、潤む瞳で俺を見ている芽以の側まで俺は近づき、
「あぁ…、残念。芽以と子供、俺は引き取る気満々だったのなぁ。」
と、肩を竦め大袈裟に言ってみれば、
「なっ!?…っ、ダメ!絶対渡さないから!」
と廉慈は叫び。芽以を抱き締め、俺を威嚇するように視線から隠すようにしているが、そんなのやっぱり無視して続ける。
「芽以。いつでも俺は受け入れる体制万全でだから。廉慈が嫌になったらいつでもおいで。」
と、芽以に向かっておいでというように腕を拡げた。冗談ぽくは言ってるけど、結構マジだからね、俺。そんな俺に、嬉しそうな笑顔になった芽以は、スルリと廉慈の腕の中から猫のようにすり抜け、
「涼、大好き!」
と、勢いよく俺の腕に飛び込んできた。同じような体格なのにスッポリ収まる身体がなんとも馴染むから不思議。
「ちょ…っ!芽以ちゃん、涼!?」
そんな俺達を見て、廉慈はもう泣きそうになってる。あまりのその情けない姿に流石に苦笑。
「旦那が泣きそうだよ。…おめでとう、芽以。もう、大丈夫だろ?」
「ありがとう、涼…」
そう言って、ふんわりと笑う顔は、幸せでいっぱい。それに少し寂しく思うけれどいいよ。芽以が幸せならね。名残おしく、芽以の身体を離してトンと廉慈の方に身体を押してあげる。
「廉くん」
「芽以ちゃん…」
しっかり廉慈を見つめる芽以と、その視線に少し戸惑うような廉慈。だけど、
「僕も子供も、いっぱいいっぱい幸せにしてね。皆で幸せになろうね。」
次の瞬間に告げた言葉と向けられた極上の笑顔。そんな芽以を一瞬真っ赤になりながら、でも、すぐにだらし無い破顔した顔を惜し気もなくさらした廉慈は、
「ありがとう、芽以ちゃん。約束する。芽以ちゃんも子供も俺が守るから。絶対に幸せにするよ。」
そう言うと、芽以をしっかり抱きしめてまたキスをした。胸焼けするような甘い甘い空気がまた復活。っておい!
「もう、帰れよ、お前ら!!このバカップル!」
また、俺が居る事を忘れ盛り上がりそうな2人を一喝した。
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