「芽以、詳しく聞かせてくれる?」
芽以が話しやすいように優しく問いかけた。ここまでは、俺も冷静に構えていられた。そうしたら、思ってもみない答えが返ってきた。
「廉くんに妊娠したって言ったら…反応してくんなかった…」
は?!おい、まてまて。今、お前なんつった?
「聞き間違いじゃないよね?芽以?」
「ん?」
ん?じゃねーよ!コテんって可愛く首傾げたって誤魔化されてなんてやんねーぞ。いや、こいつに誤魔化す気なんてないか…。はぁ〜っ。
「お前、今、妊娠したって言った?」
「うん。妊娠した。」
軽いな、おい!芽以の能天気さなんて今更だけど、これはスルーできないだろ。自分の職業がアイドルって自覚ってあるのか?
……………まぁいい。言いたい事は腐る程あるけどそれは後でゆっくり話し合うとして、今は芽以が泣いてる原因の究明が先だ。原因は、やっぱり廉慈か。反応なかった?…あい鈍いし、芽以の事になると弱いからな。どうせ、何言われたかすぐに理解できなかったんだろうね。
「あげくに、誰の子?って…ぅ〜、」
思い出して辛くなったのか、また涙をボロボロと零す芽以。ていうか、廉慈の野郎…俺の大事な芽以を孕ませたあげくに、疑うとか何様だ!…ま、なんとなく状況は分かるけど。どうせ、テンパって聞き返したとかだろ。それを急な妊娠で不安になってる芽以には疑われた、廉慈は子供が欲しくない、そんな風に勘違いしたってとこか。
「廉くんはきっと信じたくないんだ!やっぱり妊娠して困るんだ!うわぁ〜ん」
思ってるそばからそのまんまをヒステリックに叫びだした芽以。妊婦は情緒不安定だからね。
「もー産まない、どうせ産んで困る子なら、おろすもん!」
あげく、そんな事を言い出した。は?何言ってるんだ。そんなの許す訳ないだろ!ヘタレの血が半分入ってるとはいえお前の子だぞ。
「ダメだ!廉慈が本当にいらないって言うなら、俺が芽以ごと引き取ってやるよ。だから、芽以はちゃんとその子をしっかり産め!」
この際、アイドルとか、スキャンダルとかどうでもいいよ。俺とお前は元々仲が良いし、付き合ってるって言っても今更って思われるだけでマイナスにはならないだろう。ファンは逆に喜ぶくらいさ。そんな俺の言葉にビックリしたのか、どうやら芽以の涙も止まったらしい。
「本気だよ。俺んとこに遠慮なく嫁にこいよ。」
「涼ちゃん…」
呟き、俺を見つめる芽以。そんな芽以を抱きしめようとしたその時、
♪〜
タイミング悪く俺の携帯が鳴った。
ちっ、誰だよ!!空気読め!心の中で悪態つきながら無視してもう一度芽以を抱き締めようとしたのに、
「携帯…いいの?」
心配そうに言われた。
「いいんだよ。芽以は心配しなくて。大した用事じゃないよ。」
今の俺にはお前より大事な事はないから。すると切れた携帯。気を取り直し、再び抱きしめようとすれば、
♪〜
また、鳴りはじめた。しつこいなー!!すると芽以がまた心配そうに、
「急用なんじゃないの?…出てあげなよ。」
そんな事を言うもんだから、仕方なく携帯を取り出して確認してみれば、
着信
籐乃 廉慈(とうの れんじ)
…………、
お前か!?
なんて忌々しい!お前のしでかした事への後始末をしてやってるんだから、遠慮しろや!邪魔すんなし!
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