◇2
「可愛い〜//」
そんな言葉が店内のあちこちから聞こえてくる。中には、
「この子あのポスターのモデルの子だ!」
そんな声も。そう以前、店のポスター撮影をした時、ひーくんが可愛いと話題になった事があった。僕も、あちこちのプロダクション関係者に、あの子は誰?紹介して!と言われ一応、保護者である榮倉に確認したけど、榮倉からはいい返事は聞かれず、結果謎のキッズモデルと噂は噂でいつの間にか立ち消えたんやけど、覚えてる人は覚えてるんやな〜と感心した。
「生にゃんこ可愛い〜♪」
次々とトリック・オア・トリート(Trick or treatを言いながら(言えてないけどそれがまた可愛いねんな)お菓子を貰い歩くひーくんは満面の笑顔や。
中には、
「いたずら何されちゃうの〜。僕にならされた〜い!」
なんて言ってる人も居た。主に女性。まぁ、可愛いもんやな。これが男やったら大問題やけど。ひーくんに付き合いながら店内を回っていたら、
「あ!黒羽くんもハロウィン仕様!?」
ふふん。あったりまえやんか。僕かてまだまだイケるやろ。ちゃ〜んと、僕にも声がかかってるんやで。そや。ふと悪戯心が芽生えてきたから、
「んふふ…、紅葉。とりっくおあとりーと!」
「え…っ!あ…」
慌てる紅葉は、辺りをキョロキョロしながら青褪めた。やって、紅葉の近くのカゴの中にはすでに皆ひーくんにお菓子をあげてしまって無くなってるんやもん♪
「お菓子くれなきゃいたずらすんで!」
にっこり微笑んでやれば、わたわた慌て出した紅葉。さ〜って、どうしようかな?と、ニヤニヤしてたら、店内がシンと静まりかえってるのに気が付いた。皆が僕らを見ていて、中には合掌してる奴までちらほらと。なんやねん。失礼ちゃう?そしたら、紅葉がイキナリ猛ダッシュして俺の前から消えて行った。
…て、オイ!?
仕事中やで!!
「なんやねん…アイツ。おもろないな〜」
ボソッと呟いてると、消えた紅葉が勢いよく戻ってきてハアハア息をきらせながらぐいっと何かを僕の目の前に差し出した。
「?…なんやねんコレ」
「ケーキ!黒羽くん好きでしょ!」
………
「好きやけどぉ…。なんでイキナリ?」
それにどっから持ってきてん。イタズラしたろうと思ったんにな〜と、内心ガッカリしていたら、
「黒羽くんの悪戯シャレになんないから〜!!」
キッパリと紅葉が言い切った。それに、店内にいるスタッフ、客、全員が頷いている。ほんま失礼や!
「でも、ま、ありがたく受け取っておくわ。ひーくんと一緒に食〜べよ♪」
うん、ケーキに罪ないしな。好きやし。ひーくんは沢山のお菓子を両手いっぱいに抱え幸せそうやし。んふふ。喜んで貰えてなによりやな。ハロウィンってなんて幸せなイベントや。
「ひーくん、こっち向いて」
「あーい!」
パチリと記念に写真を撮った。うん。いい笑顔。
* * * *
-その頃のスタッフ達の会話
「あ〜、命拾いしたよ!!」
「紅葉くんヤバかったよね。あれ、黒羽くん絶対狙ってたよ。」
「うんうん。めっちゃ企んでた!」
「でもさ…ちょっと悪戯されてみたいかも…///」
「「「変態!?大和さんにに言うよ!」」」
「止めて!それが1番怖いから!!」
「「「「確かに…」」」」
そんな会話がスタッフ同士でなされていたとか…。
fin
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