■■ ◇プロローグ
あー、なんか面白い事…ないかな?毎日が退屈で退屈で仕方ない。別に、俺は何かに不自由してる訳でもないし、それなりにモテるし友達にも、恵まれてると…思う。
でも、何かが足りない。刺激が足りない。そんな俺は、毎日を無気力に過ごしている。今日も昼からの講義だから、それまで家に篭ってゲームでもしていようか。
* * * *
「なーなー、それたのしい」
ん?ゲームに集中していたらなんか聞こえてきたような?どっかから声?いやいやここは、俺の家だし。誰もいないし。そう思いながら、再びゲームに集中する俺。
「なんだよぉー、むしすんなよぉー」
また聞こえた。なんなんだよ、いったい!少し、少しだけ気味が悪い。うん、気の所為だ、気の所為だと、それでも無視していると、
「むー、しつけぇなー。こっちむけー、むけー」
いやいやいや、言ってる、言ってる〜〜〜やっぱり何か言ってるよ!………………気の所為、気の所為。
「も〜!むけ〜〜〜!!!」
あー煩い!煩い、煩い〜〜〜!
「あんたの方がしつこいでしょーが!」
あ!一人で叫んでしまった。独り言とかださっ!何やってるんだよ、俺は。と、思わず振り向いたらそこには、
ん?幻か?それとも夢?あれ、俺…いつ寝たっけ?目をパチクリ。うん、こんなの現実な訳ないさ。だって、振り向いたそこには、パタパタと羽を羽ばたかせながら、宙に浮かんでる奴が居るなんて現実であってたまるか。今やってるゲームじゃあるまいし。うん、ないない。もっかい寝てみるか…。寝てたかしらんけど。そいつから視線を外して目を閉じようとしたら、
「やぁっと、みたぁ」
そう言って嬉しそうに口元に手をやりながらくふくふと可愛いらしく笑ってる真っ黒なそれ。どっかで見たことあるようなビジュアル。うん、何かなんて考えたくもないね。夢なら早く覚めてくれ!
なんて思っても、それは消えてはくれなかった。なんなんだよいったい!
「…誰?お前…」
そんな思わず呟いた俺の言葉は、しっかり拾われたらしい。
「おれ?おれ、れんりぃ」
嬉しそうにへにゃりと笑いながら、自己紹介しやがった。くそっ!可愛いな、こいつ。いや、違うって!
「いやいや、なんなのお前!なんで浮かんでんの!ありえないって!」
そんな俺の問いかけに、あっさりと、
「むー。おれ、あくまだもん。」
とんでもない答えをいとも簡単に言いやがる。あー、思ってたさ。悪魔っぽいなって!でも、認めたくなんてなかったよ、俺は。何で悪魔?なんでここに居るわけ!脳内パニックだよ、俺は。しかし、そんな事は、目の前の外見は可愛らしい悪魔…レンリーだっけ?こいつには関係ない。
「なーなー、ねがいごときくから、たましいちょーだい。」
ね?なんて首を傾げて両手を出して。可愛い顔と可愛い声でお願いポーズ…。うんて一瞬頷きそうになった、あっぶねー。いや、無理!無理だね!そんな、ご飯ちょーだい!位の気安さでそんな事を言ったってやらねーよ!
”レンリー”
……………。うん、夢…だな。俺は、そんなレンリーを無視して、とりあえずゲームを再開した。
「えー、またむしかよ。つまんなーい」
そんな声が聞こえるけど、幻聴だ。そうに決まってる。きっと、もう少ししたら目が覚めるだろう。
この後、講義の時間になってもレンリーという悪魔が消えている事はなく。退屈だった日々がレンリーの出現で、めまぐるしく変わって行く事になる。
それを思い知るのは、もう少し後だった。
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