◇4
「あっ!大学!」

小悪魔レンリーと不毛すぎるやり取りをしていてすっかり忘れていたけど、すでにかなりの時間が過ぎてしまっていたのに今更気が付いてしまった。

慌てて、途中になっていた支度をすませ、大学へと急ぐ事にした。それを見つめる視線を感じるけど、あえてそれは無視。見ないフリ、気付かないフリだ。また、さっきみたいなやり取りを続ける気は俺にはない。

今度こそと部屋を出ようとする俺に、それまで静かに邪魔せず見ていた小悪魔レンリーがここで待ってましたっばかりに口を開いてきた。

「どこいくの?」

あえて、その問いには無視したい。だが、この短いやり取りの間にそれは無理な話なんだと、むしろ答えた方がいいのだと。俺は学習したんだ。

「……大学。」

だから俺は率直に、手短かに答えてやる。頼むから、この答えで満足してくれと願いを込めながら。

すると、

「おれもいく!」

そう言ったレンリーは、嬉しそうにキラキラした目で俺を見ながら、悪魔のシッポがビュンビュン振れていた。

お前は、犬か…。

「ダメだ」

ダメに決まってんだろ!だけど、当然小悪魔であるレンリーが納得するハズもなく。

「やだ、いく!!」

「………」

「………」

デジャヴ…。俺の脳裏にまた、さっきのやり取りが思い出される。頭痛がしてきた。しかし、こんな得体のしれない、自称悪魔を大学なんかに連れて行ける訳がないと、なんとか言い聞かせようと、再度口を開きかけた俺に、

「ひとり…、やだ…」

ショボンとうなだれたようなレンリーの捨て犬よろしくな姿に、不覚にもキュンとしてしまった。心なしかさっき嬉しそうに振ってたシッポも垂れてる気がする…。ないハズの耳まで見えてきた。

あー、もう!卑怯だぞ!俺は、犬が大好きなんだよ。そう思ってしまった俺の敗北はもう見えたようなモノで。はぁ〜と、ついつい溜息まで出てしまった。

「お前の姿は他の人には見えないの?」

とりあえず聞いてみる。

「…ん、たぶん」

多分?

「見えるの?見えないの?」

どっちだよ、と。もっかい聞けば、モジモジしながら俺を上目遣いに潤ませた目で見ると

「みえるひとも…いるかも?」

えへへ。って、なんでかハニカむレンリー。可愛いけど、そうじゃなくて!!見えるなら、絶対に連れてけないだろ!

「じゃあ、ダメだ!」

「やぁっ、いきたいぃ!」


* * * *

結局、またレンリーとの不毛な言い争いは続き、さすがに時間もやばくて、しぶしぶながら俺が折れた。

「羽根とシッポ。それは消せよ!消せるよな?」

投げやりに言う俺に、うんうん!とレンリー。

ふぅ…、仕方なしに俺は、急ぎ自分の服を選ぶとレンリーに渡し、

「羽根とシッポ消して、この服に着替えて!」

キョトンと首を傾げるレンリー。

「んぅ?」

「時間ない。早くしろ!」

最後は少しキレ気味にそう言うと、レンリーはノロノロと着替え出した。俺も小さい方だけど、そんな俺より少し小柄なレンリーには、肩のサイズも微妙に違うのか指先が隠れてて。スボンもちょっとブカブカで。
…くそっ、。やっぱり可愛いな、こいつ。着方がよく分からないのか、モタモタしていたが、ようやく着替えが終わると、

「できたぁ」

んふふって、嬉しそうにクルンと回ってふにゃりと笑っていた。いちいち、可愛いやつ…。

とにかく、大学へ急ごう。





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