◇不思議
「………」

「………」

ピコピコ…俺のゲームの音だけが静かに響く室内…。いつもの光景。ただ、違うのは、そこにさっきからニコニコしながらゲームをする俺をジィーっと見つめるこの、さっき突如現れたレイリーという小悪魔。今時、悪魔?そんなもの信じられない。そう思うけど、現実、目の前には背中に黒い羽をつけて、パタパタ動かし空中にふよふよ浮かんでる奴がいれば、嫌でもこれが現実だと認めるしかない気がする。

レイリー。さっきまで、煩かったくせに、今は何故かものすっごく静か。静かに、俺を…いや、俺の触っているゲームに興味津々。心なしか、大きな瞳がキラッキラしている。この視線がなんか痛いな。

もういいかな?いいよね?結構我慢したと思うよ、俺。うん、もう無理だから。限界だから!

「ね、何?何なのさっきから。」

「んぅ?」

「そんだけ見られたら穴あくわ!ていうか、見てて楽しい?」

そう問えば、

「ふん、」

「………」

「………」


あー、なんなの、なんなの!なんか、モヤモヤするんですけど!こいつとは、会話が出来ないよ。もういいや。ちょっと早いけど、大学へ行ってしまおう。もう、知らん。そう思って、ゲームをパタンと閉じて立ち上がる。

「あ、おわり」

レイリーがなんか言ってるけど、無視無視。付き合ってらんないよ。…って思ったんだけど、見てる。レイリーがすっごい目で見てるよ…。

「おわり」

仕方ないから、そっけなく答えてやったら、

「ふん…、」

レイリーはそう呟いて、着替えようと寝室へ向かう俺の後をパタパタと羽を動かしながら着いてきた。うわぁ、嫌な予感しかしない。

「何…?」

「んー、」

「着替えるんですけど…」

「ふん?どうぞ」

いやいや、出てけよ!そこは、悪魔も何も関係ないだろ。マナーだマナー!それに、

「邪魔。」

「おれ?」

「他に誰が?」

「…んふふ、いないー」

何が楽しいのか、またくふくふ笑い出したレイリー。可愛いけど騙されるな、俺!

「ほら、出て出て!」

そんな小悪魔レイリーを部屋から押し出す俺。

「やぁっ!」

レイリーは抵抗して、パタパタ上空に逃げてった。

「あっ、ちょっと!」

それは反則だろ!

「んふふーっvv」

悪戯っ子のように、上から俺を見下ろしレイリーは笑っている。

はぁ…っ、なんか疲れた。ため息をついて、もうどうでもいいや。さっさと着替える事にした。あー、無駄に体力使っちゃったな。





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