◇7
『雛、大丈夫ですかね…』
不意に成がボソッと呟いた。うん、そうだよね。俺も気になっていた。成だって当然心配に決まってる。わざと憎まれ口叩いたりするのも成の気遣いだけど本当は優しくていい奴だって知ってる。雛くんの事も本当に可愛がってくれてるんだから。
もうすでに結構な時間が経ってるよね。雛くん泣いてないかな?思ってしまったらすっごく心配になってきた。
ガタンッ!
『行こう!成。』
俺が突然立ち上がったもんだから、成が驚いた顔をしている。だけどすぐに、
『そうですね!』
そう言って成も立ち上がり、2人で雛くんの元へ急いだ。まだ検査は終わっていないのかもしれないけど、やっぱり側に居てあげたいから。
* * * *
がチャッ
扉を開けた瞬間、
『うゃぁぁぁ!うぇっ、えっえぇぇん!』
雛くんの泣き叫ぶ声が飛び込んできた。
『ほら!いない、いない…ばぁっ!』
雛くんを泣き止ませようと必死な暁良さん。
『よしよし…』
雛くんを腕に抱きながら、背中を緩くポンポン叩いてあやす柳瀬さん。
『ふ…、…っ、ふぇっ、うにゃぁぁぁぁ!』
そんな2人の努力もおかまいなしに泣き叫び続ける雛くん。心なしか、2人の顔が疲れ果てているように見えた。だけど、あれ?雛くん…?朝から、ずっと辛そうで、泣く声も弱々しかった雛くん。泣いてる姿は可哀想だけど、でもなんていうか今は元気?に大泣きしている。手足もバタバタ動かしながら…
『暁良さん!』
そんな光景をア然と見てた俺をよそに成が暁良さんに声をかける。
『あっ!やっと来た!』
俺達に気付いて少しホッとしたような暁良さん。
『ほら、お母さんが帰ってきたぞ。』
こちらも参った!という感じに俺達を見て、腕の中で暴れ泣いてる雛くんに囁いてから、こっちを見た。何やってんだ!って顔で睨まれる。
あっ!慌てて、雛くんの側へ向かう。
『えぐ、えぐ…、うぇぇ、やぁぁぁ…、』
そして全然泣き止む様子のない雛くんを覗き込んで声をかけた。
『雛くん!雛くん!』
すると泣いてた雛くんのちっちゃな猫耳が反応して、雛くんの涙でぐちゃぐちゃな瞳が俺を捉えた。
『ふっ…ぇぇぇ…』
瞳を大きく開き、小さな両手いっぱい広げて、俺へと伸ばした。その手を思わず掴んだ。
『…ふっ。ほらっ。』
そんな雛くんを、苦笑しながら柳瀬さんは俺の腕へと渡してくれた。