◇11

『じゃ、洸さん。俺、帰りますね。何かあったら連絡して下さい。』

長い長い1日が終わり、やっと家に帰ってきた。今は落ち着いて静かに眠る雛くんをベッドに運ぶと、成が雛くんの頭を撫でながら言った。

『あ、うん。今日は本当にありがとう。助かったよ。』

もう一度成にお礼を言う。

『どういたしまして。可愛い雛の為ですから。』

ニヤリと笑って成は言った。

『なぁ…、成。』

『ん?なんですか?』

『柳瀬さん達の事だけど…』

そこまで言ってその先をどう言えばいいのか、あまりにも漠然としすぎていて中々言葉にする事が出来なかった。胸の中にあるモヤモヤとしたなんとも言えない不安に押し潰されそうで。この胸の内を成にどう伝えればいいんだろうか…。言葉に詰まる俺だけど、

『………、なるようにしかなりませんよ。』

成は心得ているように一言そう言った。聡い成の事だから俺の言いたい事が解ってるんだろう。

『ほら、飼い主さん。しっかりしてよ。あんまり情けないと雛は俺がもらっちゃいますよ。』

暗くなってしまった俺に成がそう茶化した瞬間、

『やらねーし!』

思わず叫んでいた。あ〜、まただ。

『んふふ』

そんな俺に、してやったりと笑いながら成は帰って言った。

眠る小さな雛くんを眺めながら、雛くんとの短いけれど充実して満たされていた今までの日々を思い出していた。もう…、この温もりは手放せない。何度そう思ったか。なぜ、そう思ってしまうのか。もしかしたら何かすでにこの時、予感があったのかもしれない…。漠然とした不安の正体に。



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