◇9

『あの…よくあるって?』

すると、2人はしまった!って顔をして、

『ああ、うん…、まぁ…。知り合いに?』

そう、言葉を濁していたけど、

『特殊だからな。こいつ、まだ小さいし安定してないんだと思う。』

柳瀬さんはそれだけを言うと、これ以上は聞くな!そんな雰囲気を出していた。それに暁良さんは苦笑しながらも、

『だから、下手に薬使うとヤバイから。今回は、使ってなくてよかったんだよ。』

そう教えてくれた。あっ!

『俺…、動転してて…。薬とか思いつかなかった…』

俺…、ほんとどんだけテンパってたんだよ!今日はもう自分の不甲斐なさに落ち込みっぱなしだ。

『洸さんて、本当に肝心なところ抜けてますよね。だらしないなぁ』

成がここぞとばかりに追い打ちをかけるように言ってきた。グサッてくるんですけど。言い返せないないのが悔しい。ぐぐぐっとひたすら堪える俺。それを見て、

『おい…、なんか落ち込んでるよ?』

暁良さんが心配したように成に話し掛ける声が聞こえてきた。しかしそれすらも、

『あぁ、この人いつもこうなんで。めんどくさい人なんです。』

バッサリと切り捨て、でも立ち直り早い単純な人だから大丈夫。なんて、失礼な事を言っている。すっかり成は本調子なようだ。くっそ〜!

『成…』

恨めしそうに、成を見てやると、

『あっ、聞こえました?すいません。』

まったく悪びれる事なく言ってのけた。

『聞こえてるわ!』

『ハハハ、おもしろいな。お前ら。』

そんな、俺と成のやり取りを見て、2人は楽しそうに笑っていた。いや、全然おもしろくないです!

『でも、今回はそれでよかったじゃないですか。結果オーライって事で。』

そう言って、成はふふふって笑った。ん?あ、薬ね。すっかり忘れるとこだった。そうだな。結果オーライ。今回はそれで良かったみたいだから良しとしよう。

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