◇8
ぐりぐりと俺の胸に顔を埋めながら、ちっちゃな両手でもう絶対に離すまいと必死に俺の服を掴んでいる雛くんがすごく愛しい。まだ、少しえぐえぐ泣いてるけど、とりあえずさっきまでの激しく泣き叫んでた状態からは脱したようだった。
ポンポン
と、背中をゆっくり撫でてあげていると少しづつ寝息が聞こえてきて、ずんと雛くんの身体が重くなったような気がした。
あっ…寝ちゃった。俺が居ない間、何があったのかはわからない。暁良さんや柳瀬さんが酷い事をしたとも思わない。でも、酷く泣いていた雛くんが俺を見た瞬間、俺を求めてくれた。小さな身体いっぱいで。必死に…。そして今、安心したように眠っている。それでも手は必死に俺の服を掴んでいて。頼りにされてるって思えて本当に嬉しい。もう、この手は絶対に離せない。今この瞬間本当にそう思ったんだ。
『あーあ、やっぱり雛はちっちゃくなっても洸さんが1番なんだ。あんなに可愛がってるのにね〜。薄情者め。』
それまで黙って見ていたらしい成がふて腐れたように言って、俺の腕の中の雛くんを覗きながらぷにぷにと雛くんの柔らかいほっぺをつついていた。
やっぱ、最初に見た人を親だと思うのかなぁ…。そんな事を言いながら、今度は優しく雛くんの頭を撫でる。
『もう!大変だったよ!』
それを皮切りにげんなりしながら暁良さんが言って
『少し元気になった途端、大絶叫だったからな…』
こっちも、げんなりしている。そうだ!
『あの…、雛くん元気になったって?』
やっぱり!あきらかに雛くんは元気になってる。
『あぁ…、お前らが居ない間、解熱剤をね…』
『下手な薬とかは使えないし、効くかどうかもわからなかったけどね。一か八か的な?とりあえず熱下げないとだったし。』
『あっさり効いたみたいで、よかったよ。』
そんな事を話す2人。
『えっ!もう大丈夫なんですか?』
ちっちゃいままですけど…。心配になって聞くと、
『大丈夫、飲み薬じゃねぇし。』
『飲み薬は…ダメなんですか?』
『ま、ちっちゃくなったのは、遺伝子の異常だろうからな。下手な薬は使えないんだ。』
『遺伝子?それはどういう事なんですか?』
『このタイプは普通の人間とは遺伝子構造が違うんだよ。高熱で、その遺伝子が変異したんだろう…』
『こういう事例は多いんだよ。』
ん?どういう事?なんか矢継ぎ早にいろんな事を言われてるけど突っ込みどころが満載だ。いやそれよりも、雛くんみたいな人の存在を知ってるみたいなそんな口ぶりなんだけど…。