短編 | ナノ
◇おまけ [ 5/15 ]
サイド悪友

『はぁぁぁ…』

さっきから、なんかこの俺様に見えて実は繊細な昔からの悪友が鬱陶しいくらいため息をつきまくっている。らしい。らしいって言うのは、周りの人間がどうしたどうした?ってざわざわして遠巻きにしているから。このまま見ているのも面白いと思っていたけど、なんか、周りがどうかしろという空気を感じる。めんどくさい。まぁ、原因なんて分かってるんだけど、仕方ない。もう少し近くに行ってみよう。なんかぶつぶつ言ってるみたいだし。そして悪友に近付きそっと隣に腰を下ろした時、

『会話がねぇよ…』

そんな事を呟く声。へぇ…

『誰と会話がないって?』

思わず問いかけていた。

『え!お前、いつから?!』

ビックリして慌ててる目の前の男。どうやら、俺がずっと前から居たと勘違いしているらしい。面白い。

『いやぁ、なんか見慣れた人がため息ばっかりついてるからさ。なんだろうな?って近寄ってみたらぶつぶつ呟いててね。おもしろいからしばらく聞いてたんだけどね。で?会話がないって?』

本当は今来たばっかだけどね。ま、当たらずとも遠からず。罰が悪そうな顔をする彼にもう一度聞いてみた。

どうせ、あの人関連だろ?とそう言えば、少しムッと目の前の悪友は顔をさらに顰めた。ふふん、お前がそんな風になるのなんて、あの人以外考えらんないでしょ?心の中でそう呟きながら、だから話、聞いてやるよ。

そう言おうとしたら、煩い声が聞こえてきた。うわっ、めんどくさい奴が来たなー。今はあんた…邪魔なんだよ。そう思ってたら、悪友もそうだったみたいで、かなり酷い言葉をぶつけていた。あらら。八つ当たりだね、これは。そうまで言われたらさすがのこいつも、デフォルトのヘラヘラとした笑みが引き攣りはじめているのを見て、拗れる前にと、遠くから見ているこいつの恋人にさっさと押し付けた。

さて。邪魔者も居なくなった事だし、何があったのか。洗いざらい聞かせてもらおうじゃないか。


* * *

は?聞いた話の内容は。

なんだそれ…。

もの凄くアホらしい。そんなのさ、自業自得じゃないか。だいたいさ、お前は、あの人に甘やかされすぎなんだよ。

『それ、あの人が強くなったんじゃなくて』

『え…?』

『お前が弱くなったんじゃねーの?』

『はっ?!だって…えっ?そう、なのか』

思わず、そんな事を言ってしまった俺の言葉に、悪友はヒドク慌てていた。

こいつも、普段は俺様で強気だけど、まったく繊細で打たれ弱いね〜。だから、こんな状況に対応しきれないで、うじうじしている。

ふ…、おもしろい。だったら教えてあげるよ。

あんたが今までどれだけあの人に甘やかされてきたかを…さ。だから、散々言ってやった。あ〜、すっきり。

そして、トドメの一言。

『だから、あの人に愛想つかされたら終わりだね。はい、さよーならって、お終い。御愁傷様。』

はははって笑って言ってやったら彼は、虚ろな目で”…終わり…”て呟いていた。ま、そう簡単にあの人がこいつを見限るとは思わないけどね。そんな事にもこいつは気付いていないのが本当に腹が立つ。だから俺は言ってやる。

『あの人次第だろ。』

少し意地悪しすぎたかな?だけど本当の事だ。お前は、あの人の優しさに胡座をかいていたんだから。それに気付かずにな。

『お、俺!どうすればいい?』

すでになりふり構わなくなったのか、俺に意見を求めてきた。

ふうん。この俺様でカッコつけなこいつにしてはやけに素直じゃないか。それだけ追い詰められてるって事かな?その心掛けに免じて今回は助けてやるか。今回だけはな。二度目はないから。


* * *

『ね、』

『何?』

あれから、どうやら無事2人は仲直りしたみたいだ。幸せで何よりと思っていたのに、目の前の人はどうやら思う所があるようで。

『なんか、彼さー』

?上手くいってないのかな?そんな感じに表情が心なしか曇っている。

『どうかした?』

『んーー…』

『また喧嘩?』

『いや、そうじゃない…』

『じゃ、なによ?』

しばらくそんな煮え切らない事を言っていた彼だけど、ようやく言う気になったらしく重い口を開いた。

『なんか、いちいち報告してくる』

は?

『何を?』

『…自分のその日の行動。』

『は?なんだそれ?』

『しらない。』

『例えば?』

『これから誰と会うとか、今から講義だとか。それに、出掛ける時は絶対、何時に帰るから家に居て欲しいとか…』

『………』

『………』

お灸をすえすぎたんだろうか?

『あんた、ぶっちゃけどうなのよ?』

そう聞くと、何がとか言わずにすかさず答えが返ってきた。

『うざい』

ふはは…

『あんた、ストレートすぎだよね』

『だって、めんどくさい。』

めんどくさいって。まぁ、そうだろうね。あいつは、ただ目の前のこの人が優しいと思ってるんだろうけど、確かにそれは間違っていない。だけどね、それだけじゃない。この人は相当なめんどくさがりでもあるんだからさ。適度に相手を甘やかせ、広い心で包んであげてる健気な恋人に見せかけて、実は自分も好きな事をやってるだけなんだから。

でもさ、とりあえずは、

『愛されてるんじゃん!』

そう言ってやったら。

『…そうなの?』

と小首を傾げ不思議そうに返された。

『そうなんだよ』

気付いてない所がこの人らしい。まったくこのバカップルは。お互いが見えていないなぁ、なんて呆れる。ほんと、世話がやけるね。

『今度さ、言ってあげなよ。あなたの事信じてるよ!ってさ。』

あいつ、今不安なんだよ。そう言ってあげたらまた俺様の甘えたに戻るだろうからさ。

全ては、あんた次第なんだから。


fin


登場人物
※名前がないのって難しい

【恋人なあの人】
健気に見せかけた、ただのめんどくさがりらしい 。
【俺様なあいつ】
俺様に見せかけて、実は打たれ弱い。自信をなくすとただのヘタレ。
【愉快犯な悪友】
冷静に2人を見ていて、なんだかんだ相性がいい2人だなと思っている。
【煩いあいつ】
常に笑顔でバカ明るい。きっとこの人は懐が深いハズ。
【煩いあいつの恋人】
常に、貧乏くじを引かされているのに気付いているが、なんだかんだ世話焼きな人。

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