短編 | ナノ
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「ご、ほっ、ごほっ」
 
最近、体調がひどく悪い。喉も焼けるように熱く、急に差し込むようにお腹も痛くなる。最初は、ただの風邪だと思っていた。病院が嫌いな僕は、周りにいくら言われてもいつもの事だと。自力で治すのだと。大丈夫、たいしたことないって勝手に決めつけていた。そうして気付いた時には…、
全てが遅かった…。

* * * *

「並木さん。今、あなたがそうやって立っている事、そしてリンクに出て滑っている事は、とんでもない奇跡なんですよ。あり得ない。」

病院の僕の担当医の先生から告げられた。
 
「先生…僕は。僕の残された命はあと…どれくらいあるんですか?」

僕は知っている。この身体はすでに限界をむかえていて、残された時間はもう残り少ないんだって事を。淡々としたそんな僕の言葉を聞いた先生は、一瞬顔を歪めたがすぐに引き締めて、

「残念ですが…。3ヶ月…もてばいい…。それも今すぐ入院しての話です。入院しなければ、いつどうなってもおかしくないくらいに貴方の身体は…」

そこで先生は辛そうな顔をして、それ以上の言葉を詰まらせた。いいんだよ、先生。僕は理解しているから。先生のせいじゃない。自分の責任だから。自己管理能力の甘さが招いた結果。ここまでくれば、自分の身体がどうしようも出来ないくらいにボロボロである事を解っているから。だから決めてるんだ。
 
「だったら僕は。最後までリンクの上に立ちたい。僕という人間が、並木 潤夜(なみき じゅんや)が生きてきた証を皆の心に刻みつけたい」
 
そう僕は、担当医に告げた。すでに気付いた時には僕の身体はボロボロだった。治療に専念したとして、わずかに生きる為にやりたい事を制限されてしまうくらいなら。延命なんてせずに好きな事…今、自分が出来る事をやり通したい。

そして、願うなら最期は側に貴方がいてくれたら…それで充分だ。
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