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準備を終えたのだろうか?
いつの間にか、隣に居た雛くん。
「……こーくん」
「ん?何?雛くん。」
どうしたのかな?何だか物言いたげな雰囲気を醸し出しているな、なんて思っていたら、
「……、それなに?たべれんの?」
おもむろに、俺が一生懸命作っていた料理を指差して小首を傾げた…。
「玉子焼きだよ!?…多分。」
見れば分かるでしょ!
「…ぐちゃぐちゃ、」
うっ
「うぅー、いいの!食べられれば!!」
「たべれんの?」
「…、多分」
「ハラ、こわさない?」
「…………、多分」
「ふーん」
は、反応うすっ!?
「じゃ、これは?ちょーこげてっけど?」
「うっ、ウィンナーだよ!!」
タコサンにしようとしたら、何処をどう間違えたか…。酷い有様だけどね。
「えーっ、なんかボロボロだよーっ」
うっ…!わ、解ってるよ!改めて言わないで。落ち込むから…。
それから雛くんは、ポテポテと歩いてある場所まで行くと、
「こーくぅん!」
うわ…。今度は、何ですか!
「な、何?」
「ごはん、スイッチはいってないよ」
………!?
泣きそうです…。
かなり、自分のダメ加減にへこんでいると、雛くんがまた、いつの間にか側まで戻ってきていて。じーっと俺を見ていたから、慰めてくれるのかな?なんて、一回り以上も歳が離れていると言うのに情けない事を思う俺。無防備になった所へ、
「こーくん、りょうりへた」
バッサリ、一言。うっ!ぐ、グサッときましたよ、今のは!?
ひ、雛くん…。さらに追い打ちをかけるように、
「よく、いままでいきてたね?」
なにげに、酷いよ、雛くん…。俺、泣きそうだよ。昔の可愛い可愛い、天使のような雛くんはどこへ行ってしまったのだろう…。いや、今も可愛いけどさ。なんて、遠い日の雛くんを思いつつ、心の中でぶちぶちと愚痴を漏らしてしまうのは仕方ない。理不尽だとは思うけど。
「へたなのに、つくってくれたの?」
そんなしらず俯いてしまった俺を覗き込みながら言う雛くんに、
「だって…、雛くんの晴れの日だから…。作ってあげたかったんだもん…。」
ボソボソ呟いてる俺に、
「んふふ…、ありがとう。」
そう言って、昔から変わらないふにゃっとした笑顔で笑ってくれて。その笑顔が昔のやっぱり天使な雛くんだったから思わずポーっと一瞬惚けてしまった俺。
ちゅっ
…///////!?
そしたら、唇に何か温かいモノが触れる感触が!!
「ひ、ひ、ひ、雛くん//!!」
慌てて頬に手を触れ、えぇーーーーーっ!い、今の、もしかしてき、キスですか!?わたわたしてしまった俺に、またクスクス笑う雛くん。
「んふふ、おれい」
と悪戯っ子のような笑みを浮かべる雛くんに、やられた!と、赤くなった頬を押さえたまま愕然と立ち尽くす俺だった。
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