◇2
『とりあえず、入って』
 
苛立ちを抑えながらそう言って、手を引こうとすれば
 
『ゴメン…』

そう言って夕姫は一歩後ろに下がった。
そんな、行動にも俺はイライラしてしまって


『こんな所にいつまでもいたらマズイでしょう?さあ…』

 
早くと、もう一度手を引こうとしたら、やっぱり避けられて…
いったい何がしたいんだ!!
そんな苛ついた俺の態度に、
 

『…帰る!』


夕姫が叫んだ。

 
はっ?!
 
『何言ってんですか?』

『だって…、しゅうは迷惑なんだろ!』

 
そう言って、今日初めて顔をあげた彼は…

泣いていた…
 
 
『来てしまった物はしょうがないでしょ。迷惑なんかじゃないですから…』


つきそうになる溜息と苛立ちをこらえて伝えた言葉は、
 

『嘘だ!だって…しゅう…イライラしてる。俺の事、欝陶しいって思ってる』
 
 
はぁ…。
こんな彼は珍しい。
思わず、溜息を漏らしながらも、

 
『もう…疲れてるんです。とにかく、早く入って…』


こんなやり取りは勘弁してほしい。
俺は本当に今日は疲れているんだから。
とにかく早く休みたくてなんとかなだめようとしたのに、フルフルと首を振り中々言う事を聞かない彼。
 

ほんとにもう…いい加減にして欲しい。
そんな俺の気持ちを感じ取ったのか、
 

『……っ!帰る!』

 
彼はそう言って俺が止める間もなく駆け出した。
 

『おい?!』

 
あんな泣きはらしたような顔でしかもこんな時間にヤバイだろ!
俺は慌てて追い掛けた。
 

でも、すでに彼の姿はどこにもなく…
しばらく、車で探したけれど見つからず…
電話しても繋がらない…

 
『あぁ…、もぅ!』

 
結局俺はその夜一睡もできずに、次の日を迎え仕事をするハメになった…





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