◇21

『はい!そこまで!?』

急に、ドアが開いたと思ったらいきなり聞き慣れたメンバーの呆れたような声が聞こえてきた。

『お2人さん!ここ、どこだか解ってるの?』

その声がもう一つ。

『声、でけぇし』
 
『俺達、入口で誰も来ないようにしてて、ごまかすの大変だったんだからね!』
 
矢継ぎ早に告げられる言葉。だけど2人の顔はいやらしくにやけていて。嘘つけ!どうせ、おもしろがって入口で聞き耳たててたんだろ!?と容易に思い当たり腹が立った。

まぁ、盛り上がりすぎてさすがにこれ以上はヤバイと思ったから出てきたのは本当なんでしょうけど。

『ほら、姫ちゃん。こっち来て。飢えた狼さんに食べられちゃうからね!』
 
おい!?失礼な。夕姫に変な事言うなよ!あいつ、絶対に後でしばく!心の中で俺は毒づいていた。

この後の、メンバーその2の制裁方法についてあれこれ考えている俺の耳に、

『でも…よかったね。姫ちゃん。そして、ナナも…』
 
それまでのからかうような口調が一転。本当に、嬉しそうに、柔らかい声で、一夜がニッコリ笑って、祝福してくれた。それについで、

『本当だよ。ナナ、もう逃げんじゃねぇぞ!?夕姫の事も絶対に泣かすなよ!今度泣かせたら、承知しないからな!』

メンバーその1である何様俺様彰良様が少し怒ったように言ってきた。彰良は、夕姫が大好きだからな。きっとずっと寂しそうな夕姫を見ながら彼は彼なりに自分じゃどうしようも出来なくて悩んでいたんだろう。少し、しんみりとした室内。
だが、

『でもさ、でもさ!ナナが泣くなんてね〜』
 
あひゃひゃひゃと、一夜が高らかに笑って。
 
こ、こいつら…いったい、いつから居たんだ!?それ、結構最初の方だよな?なんだか、からかわれて急に恥ずかしさがこみ上げてきた。

『それだけ、本気なんだろ』

そんな、羞恥にかられている俺の耳に、もう一つの声が聞こえてきた。
 
護。
1番迷惑をかけてしまった最後のメンバー。
 
『護…俺…』

ごめん。そう謝ろうとした俺が口を開く前に、護が言う。
 
『手放せないくらい大事な物なら、もう二度と手放すなよ。また夕姫くんが泣かされたら…俺、次は手を緩めないよ。』
 
そう言って、ニヤッと笑った護。
 
ありがとう。彰良も、一夜も、護も。皆に何も言わず心配ばかりかけてしまった俺なのに、それでもまた、こうして受け入れてくれる貴方達と笑いあえるなんて本当によかったと思う。
 
『もう2度と離しません』


だから、今度は貴方達にそう誓います。そして、笑って夕姫を見たら、夕姫もものすごく綺麗な可愛い笑顔で笑っていた。皆で、笑いあって。ホントに、ホントにこの大切な物を失くさなくて良かったと、改めてそう思う事ができた。



 
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