◇20
『ナナ!?』
真っ赤になる貴方。ほら、俺、貴方の事になると冷静ではいられない。そして、気付いた。
『もう、しゅうって呼んでくれないんですか?』
あの時…薄れていく意識の中で、必死に俺を呼ぶ『しゅう!』って声が聞こえていた。あれは、夢だった?違うよね。もう一度、貴方のその唇からつむぎ出される舌ったらずな可愛い声で俺の名を呼んで欲しい。
しゅう…って。
『いいの…?また、俺、ナナの事、困らすかもしれないよ』
そんなの、
『むしろ、歓迎です。』
『…しゅ、う…』
『夕姫。俺の所にもう一度…、戻ってきて下さい。』
お願いします。真剣にそう言うと、夕姫の顔がくしゃりと歪んだ。
『…よろしくお願いします!』
そして、泣いていた顔が笑顔に変わり叫んだ。
はぁ、よかった。
『夕姫!?』
俺は、彼をきつくきつく抱きしめて、
『もう、絶対に離しません。誰にも渡しません。大事にします。』
ようやく、この手に戻ってきてくれた。
『戻ってきてくれて。許してくれてありがとう。』
もう一度この手にできた温もりに感謝しながら、喜びを噛み締めた。そして、
1年振りに、俺は彼にキスをした。
あぁ、俺…、我慢できないかも。ヤバイ、これはヤバイ。