◇19

『ねぇ…それは、俺の事がまだ好きだって事でいいの?』
 
『もう一度、俺にチャンスをくれるんですか?』
 
どうなんです、と。俺は期待を込めて少し必死さを滲ませ夕姫に確認した。

『一度はもう諦めようって、あなたの前から消えてしまおうって、覚悟したけど。これを見たから』
 
そう言って、夕姫が俺にぶつけたペアリングを取り出した。そして、俺のどうしても捨てられなかったペアリングも。
 
『俺は、これをどうしても捨てられなかったんです。これだけは…。でも、見る度に胸が苦しくて。あなたへの想いに焦がれて。それでも…、どうしても捨てられなかった。もし、あなたも俺と同じ気持ちなんだったら…』
 
『あの時。あなたが1番俺を必要としていた時に、冷たくしてしまって、本当に後悔したんです。もう、もう2度とあなたを悲しませないから。だから…、もう一度俺とやり直してもらえませんか?好きです。俺は真木 夕姫をどうしようもないくらいに愛しています。これまでも、これからもずっと…』
 
今の俺の気持ちを包み隠さず全部吐き出した。緊張する。怖い…。こんなにも、ドキドキするのは2度目だ。

1度目は…

初めて貴方に告白した時だった。あの時も、貴方の答えを聞くまでが長く感じられて、このまま心臓が止まるんじゃないかと思う位に心臓が早鐘を打っていた。

『…泣かないで…』
 
不意にそう言われた瞬間、俺は彼に抱きしめられていた。
 
ポンポン…と、背中を子供をあやすように叩かれて。泣かないでってもう一度言われた。俺…、今、泣いてるの?

『俺の方こそ、自分勝手で我が儘で。いっつもナナを困らせてばかりで。こんな俺じゃ、きっとまたナナを…』

それでも!それ以上は言わせたくない。

『それでも、俺はあなたじゃなきゃダメなんです!俺が真木 夕姫が側に居ないとダメなんですよ!?』
 
ここが病院だという事も忘れて俺は叫んでいた。



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