◇13
これが俺の出した答えだった。本当は、彼への気持ちを封印しようとした。そして、前みたいに接していきたかった。
でも今日、改めて彼を見て思ってしまった。そんな事、絶対に無理だと解った。
彼が側にいれば、気持ちはやはり彼へと向かってしまうから。前みたいに彼に触れてしまったら、彼への気持ちが溢れ出していっぱいになる。
きっと…、あなたへの欲望がいつか抑えきれなくなるんじゃないか?いや、もしかしたら狂ってしまうかもしれない。
そうした俺の思いはいつか護を憎み、夕姫への愛は歪になって、とんでもない方向へ向かうんじゃないか、と。それが俺にはどうしようもない恐怖だった。
そう。この1年間、俺が取ってきた行動は間違いじゃなかった。あれは無意識の俺自身へのブレーキ。歪んだ方向へ向かわないよう。彼を傷つけないよう。俺なりの防御だったんだ。それが今日確信した。
離れた方がいい。俺は彼の元から。今ならまだ綺麗なままで終われるんだから。
『事務所にはこれから言います。皆にも、正式に決まったら伝えたいと思います。ただそれまでは、もう少しだけよろしくお願いしますね』
そう言って、彼に頭を下げて、俺は彼をもう一度見た。彼は何も言わず、じっと俯いていた。
本当にすいません。俺は、ずっとずっとあなたの側に居たかったし、守っていきたかったけれど。でも、それはもう俺の役目じゃないんです。
夕姫…
護に幸せにしてもらって下さいね。俺では出来なかったけれど、護だったらそれが出来ますから。