◇11

待ち合わせの時間になった。待ち合わせの場所は俺達にとって思い出の公園だ。なぜ、ナナがここを選んだのかは解らない。ここは2人でいる時間がとても穏やかな物になる大切な場所だった。

ここで、これからナナはいったい俺にどんな話をするんだろうか?
 
そんな事を考えていたら、なかなか足が前に進まなかった。雨も降ってきた。覚悟を決めて、行かないといけない。深呼吸をしながら俺は、心を落ち着かせるようにギュッと、自分の拳を握りしめた。
そして、意を決して待ち合わせの場所に向かったんだ。

そうして見えてきたのは見慣れたような、それでいてもう何年も会っていないかのような不思議な感覚。そんなナナの姿がそこにあった。

この雨の中を傘もささずにずぶ濡れになりながら。彼は空を見上げていた。
 
何…っ、何やってるの!?

一瞬、ナナが消えてしまうんじゃないかと感じてもの凄く怖くなった。

『ナナ!』

俺は、そんな恐怖を振り切ってナナの元へ急いで走りより、そして傘を差し出した。


…夕姫end
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