◇9
side 夕姫

ナナと別れて1年がたった。あの日、ナナに別れを告げた日。俺はもう限界で、待つって言ったのは俺だったハズなのに、優しく手を差し延べてくれたマモくんの想いに縋り、その手を取ってしまった。
 
そんな最低な俺なのに、ナナは優しかった。
 
『そうですか…仕方ありませんね。幸せに…なって下さい。』
 
そう、言ってくれたんだ。泣いちゃいけない。泣いちゃいけないんだ。今、ここで俺が泣いたら卑怯だ!そう思うのに…やっぱり狡い俺は泣いてしまって。泣きながら謝罪の言葉を言い続ける俺に、
 
『何、泣いてるんですか。俺が悪いんだから。いいんですよ。』
 
そう、俺の事を一言も責めず全部自分が悪かったんだとナナは言った。
 
なんで、なんでこんなにも優しい彼を信じる事が出来なかったんだろう。なんで、待てなかったんだろう。これが、この本当に優しい彼が本来の彼だったのに。知っていたハズなのに。
 
別れ際

『じゃあ…俺、行くから』
 
そう言った彼の横顔。見るとあれは、涙…?あのナナが?確かめようとナナの顔をもっとよく見ようとした俺を遮るかのように、

『じゃあ…またね』
 
逸らされた顔。そして、ナナの車が俺の前から走り去って行った。
 
もう、ナナの車の助手席に乗る事はないんだ…。自分が別れを切り出したクセに…最後まで、そんな事を考えてしまう俺はやっぱり最低で…。ナナの車が見えなくなった後も泣きながら見送りしばらく立ち去ることが出来なかった。

 

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