◇8

夕姫を忘れる事なんて結局出来る訳がなかった。
 
この1年間ですっかり俺の強がりなんて俺の心に降り続ける雨が洗い流してしまった…。
 
そうして解ったのは、夕姫を失って得た孤独やさびしさばかりで。夕姫を想いだすのが辛くて遠ざけてしまっていた子供な俺と、メンバーにも気を使わせていた最低な俺だった。
 
夕姫も、そしてメンバーも。皆いつでも俺を受け入れる準備が出来てただろうに、ただ俺だけがそれを拒んでいた。でもようやく解りました。そんな独りよがりは自分も周りもダメにする。本当は、俺があなたに気を使わなせないように振る舞わないといけなかったのにね。それに気付くのに1年間もかかってしまいました。

『ふふふ…』
 
今まで、自分の方が大人だと思ってましたけど、実は、どうしようもなく子供だったのだと解りましたよ。

逆に子供だ…と思っていた夕姫の方が大人だったのだと。
 
でも、そんな子供な部分の自分に気付いて、夕姫にこんなにも依存していた事にも気付けて。イロイロ考えさせられたこの1年間のこの孤独とさびしさの中で俺は、大人になれたんだと思います。
 
そう思わせてくれたのは…気付かせてくれたのは、他でもない。やっぱり…夕姫…、あなたなんです。
 
そんな事を、小さく降る雨の中で、彼を待ち続ける俺は考えていた。
 
傘もささずにただ、佇んで居た。
 
そして、聞こえてきた俺を呼ぶ声。どうしようもなく好きで、恋い焦がれて仕方がない愛しい人の声。
 
『ナナ…』

俺の大好きな彼の声が俺の名を呼んだ。


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