◇3

『…これのせいなのかな?』
 
俺は、手の中の小さなリングを見つめた。一人が好きなように見える彼は、実は寂しがり屋な面があって。付き合いたての頃、俺の仕事が忙しくて随分我慢していたのを思い出す。
 
だから、少しでも彼が安心できるならと、ペアリングをプレゼントしたんだ。
 

『これ…』  

『ペアリングなんて、重いですか?でも、これ身につけてたら、一緒にいる気分になれるかなって思ったんです。』

恥ずかしかった。でも、俺だって必死だったんだ。 せっかく、想いが実って付き合えたのに、寂しい思いをさせてダメになったら洒落にならないと。 そう思って、用意した2人のペアリング。拒否られてしまったらどうしようかとドキドキしながら、彼の反応を待っていた。

『夕姫…やっぱり迷わ…』  

沈黙と羞恥に耐えられずペアリングを取り戻そうとした俺の言葉は、

『すっごい嬉しいvv』  

そう言って抱き着いてきて、最高の笑顔を見せて喜ぶ彼の姿にホッと胸を撫で下ろした。

『迷惑とかじゃないですか?』  

『全然!ありがとう。ナナ、嬉しいよ!』  

そう言って彼は、マジマジとリングを見つめながら 、

『指につけてもいいかなへへへvv』  

なんて言っている。

『いやいや、それだけは止めて!?マジ止めて下さい!一応、俺達アイドルだから。騒ぎになるでしょ!』  

本当は、あなたの綺麗な指にして欲しかった。だけど… やっぱり職業柄それは無理だとわかっている。でも、この人ホントにやりそうで恐い。

『え!?ダメなの?』  

『ダメです。』  

そんな押し問答に、ぷぅと頬を膨らませて拗ねてるのは可愛いですけど、これだけは譲れません。  

『ほら、こうして…チェーンに通して、首からさげればいいでしょ。』  

『あっ!本当だ。へへへ、ナナもつける?』  

『えぇ』    

『ぅふふ//お揃いだねvv。いつも一緒に居るみたい』  

嬉しそうにそう言う彼に自然と笑みがこぼれる。

『もう寂しくないですか?』  

『うん。寂しくないよ!寂しくなったらこれ見ていっつも一緒だなって思う』  


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