◇15
『じゃあ…俺、行くね』
もう、恋人としての彼がこの車に乗るのは最後だと、一瞬、涙が出そうになった。でも、そんな姿を彼には見せられない。俺が泣いたら、優しい彼は自分を責めてしまうから。
俯いて、涙を見せないように…
『じゃあ…またね』
そう言って俺はすぐに車を走らせた。ミラーから彼の姿が見えなくなって、路肩に車を寄せる。
『ヤバイな…これ以上走ったら事故っちゃうよ…』
ハハハ…
涙が、止まらない。
あの日
君が不安だった時
何故、優しくできなかった?
側にいてあげなかった?
今さら後悔してももう遅い。
明日からは、俺達はただのメンバー。隣にいつも居て笑ってくれた君はもういない。
あーあ、俺…大丈夫なのかな?
俺の心は雨。
晴れる日は来るんだろうか…
end