◇9

しゅうへの不安でボロボロになっていた俺には、そんなマモくんの優しさが本当にたまらなくありがたくて、いけないと思っていても俺はマモくんの優しさにすがってしまう。今、この優しさを手放せずにいた。
 
マモくんの家に着いても、マモくんは何があったのかなんて聞かない。俺が好きな温かいココアを用意してくれて、俺が自分から何かを話すのをジッと待っていてくれる。

そうだ!明日は、マモくんも朝が早いのに…

なんだか、しゅうにもマモくんにも自分の我が儘で振り回してるようで、本当に自分で自分の自分勝手な行動が嫌になる。
 
『マモくん…俺…』

これではいけないと。ちゃんと話さなくちゃ。マモくんの優しさに甘えていてはいけない。そう思ってポツリポツリと俺は今日の出来事を話し始めた。
 
マモくんは、時に詰まりながら話す俺の言葉をただ静かに聞いてくれていた。なんとか全部話終わって、

『俺…最低だよね…』

顔を上げられず俯いてそう言ったら、急にふわっと、何か温かいモノに包まれた。

マモくんに抱きしめられたんだ…。そう気付くのに少し時間がかかってしまった。マモくんは、俺の背中をポンポンと、子供をあやすようにしてくれて、
 
『夕姫くんは悪くないよ。ナナも悪くない。2人共疲れてたんだよ。明日、また話せばナナも解ってくれるから。』
 
だから、夕姫くん。明日の為にもう寝ようね。マモくんの言葉と体温の温かさや、リズムが心地よくて、精神的にも肉体的にも疲れきっていた俺は、そのままマモくんの腕の中徐々に意識が沈んでいき、すぐに眠りの中に引き込まれていった。
 
明日は、しゅうと上手く話せる事を願いながら…




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