エロゲーなんてオレも坂上も初めてのプレイだった。
 パッケージから見る限り、SMものっぽいけど、そっちの知識はないからなんともいえない。
 どきどき、わくわく。高校男子のエロ方面の好奇心を存分に坂上に対し向けながら起動させた。

 その結果、わかったこと。
 エロゲーのプロローグって、意外と、長いんですね!

「飽きる」
「(だろうね)」
「俺ノベルゲーとか、育成ゲームって苦手なんだよなぁ。がっつり進みたいからさ」

 坂上が普段プレイしているゲームは専らアクションだ。または、RPG。
 一人掛けのソファの上でだらっとしながらコントローラーは坂上が握っている。
 好感度システムがあるせいか、妙に選択肢も多い。がっつりSMっぽいのに、女の子が危機感持っていると襲えないとか、変なところにリアリティある。
 登場人物の中、理沙という女の子が一応一番のヒロインらしいけど、素直な女の子で落とすのは一番楽そうだ。
 そんなキャラですらエロシーンに行くまでに一時間以上かかっている。

「なっげ」
「エロだけみたいね、坂上」
「なんかもうどうでもよくなるわ……」

 ぽいっとコントローラーをオレに投げつけ、坂上はエーロ、エーロ。と、変なコールを言い出す。
 最初の恥じらいはどこに行ったんだ坂上くん。いや、まあエロを連呼する坂上もエロ可愛いけどさ。
 嘆息し、ボタンをむにむにと操作して進めて行く。
 坂上とえっちぃ空気になってにゃんにゃんできたら最高だったけど、どうやら読み間違いだったみたいだ。

 今日わかったことはエロゲのエロいシーンは長いこと、あと安達君はこんなゲームをやりこむ意外とテクニシャン。って、ことだろうか。
 欠伸交じりに慣れないエロゲを進めて行くと、なんとか理沙ってこのルートに入ったようで、いつの間にかその女の子と放課後の体育館に閉じ込められていた。

 ありがちなパターンだと思う。
 なんとなく先の展開が読めたが、ボタンを押して進めて行った。

「あー? キタ?」
「うん、入ったっぽいなー」
「理沙ちゃんの声ってなんか若干高く俺苦手なんだよな」
「そうかー?」
「んーまあ、よくわかんねぇけど」

 主人公がつけていたネクタイをキャラの女の子の腕に巻きつける。
 おお……普通に犯罪行為だぞ、それ。なんて、眺めながらボタンを押して先を促す。この辺り、オレもなんだかんだ普通の男の子だって自分で思ってしまう。
 一気に制服とブラジャーをはぎ取られ、女の子は顔を真っ赤にして泣いていしまう。

「エロゲっぽいな」
「ああ……エロゲっぽい」

 二人ともエロゲしたことないけど一緒に考える。
 どんどん先に進んでいく性行為。徐々にあがっていく画面の中の女の子の嬌声。
 卑猥な音まで画面から聞こえてき、最近のゲームのクオリティの高さに眩暈を覚えた。
 ボタンを押しながら、チラリと坂上に視線を送った。
 さっきまで眠そうだったのにうっすら頬を染め、それでも画面を見ている坂上。ああああやっべえええええマジ可愛いいいい!

 照れてるのかな、エロゲで? 可愛いマジ可愛い襲ってしまいそう、いやこれは襲わなければならないレベルじゃないのだろうか!?
 頬に薄い朱が差して、こくりと唾液を呑み込む喉は小さく揺れる。

「さかが「神原早くボタンボタン! ちょう先気になる」」
「……え、坂上さん?」
「エロゲすげぇ! ちょうエロイ!!」
「え、あの」
「パッケージでこの子がご主人さまって言ってるシーンがあるからそこまでいくぞ!」

 さっきまで眠そうだったじゃん。さっきまで恥らってたじゃん。
 そこで、オレは思い出す。
 坂上だって普通の男の子ので、えろい女の子に興奮するのは当たり前だ。
 そして、所詮ゲーム、AVほどの威力は坂上に与えられないことはなんとなくわかってしまった。

「なにしてんだよ、神原」
「夢見てた自分を殴りたい衝動に駆られてるとこです!」

 読み間違えた。そう思うのは、二回目。
 残念だけどでも、どこかでほっとしていた。



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