(R18) 粘着質な音が、下腹部から聞こえた。 「っ…やっ、」 ジッパーを下ろされて、パンツの隙間に先輩の手が入り込んでいる。他人に触られる感覚に、熱がぐるぐる生成されている。 涙が止まらなくて、嗚咽なのか、嬌声なのかわからないくぐもったものが零れる。その度に志岐先輩はおれの涙を舐めながら名前を呼ぶ。 先輩の肩に指を食い込ませ、声を漏らさないように容赦なく先輩のブレザーに噛み付いた。 怖い、怖い、怖い! 痺れる下半身の感覚に眩暈がする。びくんびくんと体が震えて快楽が襲ってくる。 竿の部分を軽く握り、上下に擦る。オナニーをしたことがないなんて言えるほど純情でもない。でも、自分でするのとは違った。 カリの部分を人差し指がつぅっと撫でる。それだけで悲鳴を発しそうになった。 こんな自分、知りたくなかった。知られたくなかった。 おれは口では先輩を好きだって言えないし、怖いって言っているのに、体は気持ちいいことに従順だ。 ぼろぼろ涙が零れた。 先輩はそれを舐めながらおれの名前を呼ぶ。その、繰り返しだ。 ぐちゅぐちゅと先走りを掌に馴染ませて先輩は掌を滑らせる。掌の熱と絡まって、苦しかった。 「はっ…感じすぎ」 「ふぅぅ…っぅ」 「あー…制服、ぐしょぐしょだし」 真っ青な青空、神聖な学び舎で行われる淫行は背徳的で、倒錯的で、精神的にもきつかった。 パンツの中で遊ばせていた手を一旦止め、先輩はそのままおれの…愚息、を、外に放り出す。 太陽の下でぬめって、てらてらと光る卑猥なそれに視線を外したかった。でも、おれは言葉を吐き出さぬように先輩のブレザーを噛んでいるから目を閉じることしか出来ない。 一度視界に入り、脳にインプットされた淫靡な光景はなかなか離れなかった。 無骨な手の中で、そそり立っている赤黒いもの。ひくひくと躍動しているものは間違いなく快楽の象徴だった。 ちゅ、じゅ。手のひらの中で聞こえてくる湿った音は先程よりも大きかった。 「ふぅっ、ふっ…」 「政哉、こっち向け」 「んぅ!」 嫌だ。 そういう意味を込めて首を軽く振ったら、今まで緩やかに動いていた手を止められた。視線だけを向ければ、ちゅっと額からリップ音が聞こえて驚いた。 啄ばむように何度も、何度も、額、瞼、頬、耳に唇が落ちてくる。 気持ちよさに霞んでいた脳味噌が、さっきの、先輩の言葉を思い出させた。 『最後まではしねェ。けど、お前はどんだけオレに好かれてるかしっかり体に刻んでろ』 自然に、口にこめていた力が緩んだ。 「しき、せんぱい?」 「いい子」 ふわりと、おれの背中を支えていた先輩の手がおれの前髪を指で払った。 口角を上げ、ニッと笑んだ存在に今までにない程心臓が喧しく鼓動を立てた。瞬間、唇を志岐先輩の唇が覆い、下腹部に刺激が走った。 「んぅ、…はぁ…あッ、ぁ」 「かわい」 上も、下も、苦しい。 舌が絡まって唾液が落ちる。おれの顎を伝って気持ち悪い。でも、気持ちいい。 喉の奥まで入り込んでくる舌の感覚に腰が震える。しゅっしゅっと、音が聞こえるほど擦られているものは快楽を吐き出したくてビクビク震える。 「あっ、ぁっ、も、やだぁ…!」 「…政哉、ティッシュかハンカチあるか?」 「な、ぃ! はぁっ…ぁ…って、なにっ!」 「セーエキで、汚したくないだろ。制服」 ぐりっと、尿道の部分を親指で刺激された。中を通っていく熱の感覚を感じて、それが入り込む先を見ておれは死にたくなった。 おれのものは、先輩とおれの体の真ん中にあって、おれの体は先輩の膝の上にあって、例の白い液体のお世話になるのは完全に先輩だった。 でもこの状況はおれが作り出したものじゃない。だから、文句は言ってもいいはずだ。 「――購買のビニール使うかよ…!」 「パンは取り出したから平気だろ」 「変態死ね!」 「お前が言うか? おら見ろ、オレのブレザー肩の部分変に濡れてんだぞ。肩も痛ェし」 見せ付けられたものから視線を逸らせば、頬に唇が触れた。 「逃がさないから、覚悟しろ」 鷹を思わせる、猛禽類の獲物を狙う眼差し。 瞳を見開き志岐先輩を見返せば、今度は口に触れた。そっと触れるだけの、甘いもの。 流されてしまいそうになる。流されてしまえば、好きだって言える。 どうしようもない自分に情けなさを感じ、先輩を直視できなかった。 |