第一声は「馬鹿か?」だった。 おれのあらん限りの勇気を振り絞った言葉に対し、それはいかがなものでしょうか! と、あの不良に問いただしたい。 今思い出してもむかつくが、志岐先輩は真顔で「馬鹿か?」と、言いやがった。 普通さ、彼氏が彼女のポジションの人間に「体で払います」的なこと言われたら興奮するんじゃないのか? 少なくとも、おれが彼女のポジションの人間に言われたら興奮するな! もう、できないけどさ。 先輩って、少なくとも遊んでいたことは否定しないし、そういうものに慣れてしまっているのだろうか。 おれとあの……えろいことしてるときも、大抵無表情に近いか、嫌な笑顔浮かべるだけだし。 齢18にして枯れているのか? ……ああ、いや、それはないな。先輩えろいし。 だったら、なんであんな反応だったんだ? ここで、もしかしておれって好かれてないのかな。なんて考えが浮かぶほど、おれは馬鹿じゃない。 おれは先輩が好き。先輩はおれが好き。これはもう揺るがない。 だって、先輩は好きじゃない人間には触ってこないだろうし、勃ちそうにない。 思い出さないようにシルエットだけを思い起こし、そして、仕入れた知識を思い出してしまった。 あれが、おれの、尻の穴に……。 ……いや、好きだよ、先輩の事は。でも、あれなんであんなにでかくなるんだろう。日本人の平均を明らかに上回ってるよね、先輩の。 「早まったのって、おれかな、やっぱ……」 キスは好きだ。先輩には言わないけど。 軽く触れるのも、べろちゅーも、好き。 甘い香水みたいな匂いをつけているときもあるし、甘い物を食べた後のキスもある。 糖分は嫌いだけど、先輩とのキスは嫌じゃない。好きだ。言ったら調子に乗るから絶対に言えないけど。 でも、おれもオトコノコで。それ以上先にも進みたい。 なんとなく、おれの体を気遣ってくれてるのはわかる。仕入れた知識で、痛いかもしれないことも知ってる。 それでもおれは、先輩に、先輩と――。 「――なんであの人余計な事は気づくのに、こういうの気づかねぇんだよ……」 (人の気も知らねぇで) 吐き出されたその台詞に咄嗟に返した言葉にうな垂れる。 仕方ない、じゃあ、他に何を言うんだ。 心臓がうるさい、絶対顔が赤い、すげぇ嬉しい。でもまだ駄目。 がっつく、情けないけど絶対に。離せなくなる。これ以上ないと言うほど、今でも苦しいのに。 白い肢体が何度夢の中でめちゃくちゃに乱れたのか、教えてやろうか。ドン引きされると思うけど、それがある意味あいつのためだ。 ああ、くそ。 馬鹿、ほんとう、馬鹿。 「なんで普段はそういうこと言わねぇのに、そういう時に思いきりがいいんだよ……」 |