屋上で先輩と一緒に飯を食べるのは最早日課になっている。 最近は暑いから中庭の木陰もいい場所だけど、やっぱり屋上が多い。志岐先輩は、高い場所が好きらしい。 「政哉、おまえまたパンかよ」 「先輩は最近弁当多いッスね」 「テレビの特集で興味持った」 「あんた女子ッスか」 なんというか、志岐先輩と付き合っている前も、最中も、この人は色んな顔を見せる。 不良という概念をなぎ払いすぎだ。 受験生だから授業はある程度出ているけど、出ている回数は他の生徒よりも少ない。 でも、勉強を教わっているおれは先輩が予想以上に頭がいい事を知っている。 数学が得意な先輩で、おれは数学が嫌いだからなおさらそう思うのかもしれない。 まあ、アッチの勉強は優秀ですけどね先輩は! 缶コーヒーを飲みながら、先輩をチラッと見る。 えろいことした次の日も、あっけらかんとしている。 おれ一人で悩んで馬鹿みたいだけど、実は先輩が結構考えていることを知っている。 「明日弁当作ってやろうか?」 「ええマジッスか!」 「一個も二個も変わんねぇよ」 「よっしゃあ! あ……でもおれお返しできません」 「じゃあ、体で支払え」 にっこり。と、笑顔で言われる。 知識を仕入れる前のおれなら「ふざけんな死ね」そう、単純に突っ込めた。 でも、知識を仕入れてしまったおれは先輩の言葉に固まる。 体で支払えってどこまでの話なんだ。 いや、先輩の事だから前みたいに、おれに、あの、キモチイイコトして、終わりだ。 でもそれって、先輩は気持ちよくなくて、男のおれには充分理解できる辛さがあって。 黙ったおれに期待通りの反応がなくて、先輩は首をかしげる。 赤いメッシュが風にふわりと浮いて、その仕草がかっこいいのに可愛く見えるおれは病気だ。 怖いって、痛いって、尻って無理だろそんなの普通。 でもさ、でも。おれだって男で、先輩みたいにそんなテクも、話術もないけど。 やっぱり好きな人には気持ちよくなってもらいたくて、自分だけ気持ちいいのはいやなんだ。 「――……す」 「政哉?」 「体で支払いますッ!」 絶叫。 遠くの山で木霊するおれの声は、運動場にいた生徒も振り向かせていたらしい。 |