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指先が冷たい

「死ぬな、死にそうになったら逃げろ」

その言葉を聞いた俺は直感的にこいつを好きになることはないと感じた。
どうやらここには俺と気が合うやつはいないみたいだ。

「そんで隠れろ、……運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ 」

そんな俺の内心を知ってか知らずか言葉を続ける男の名をリンドウといった。
アナグラではかなりの信頼を得ているらしくそいつといれば生きて帰れる可能性が高いという話をいくつか聞いた。

竜胆・・その名の意味は 強い正義感、悲しむあなたに寄り添う

ふと思い出したその花の意味にまだ出会って間もないがその男にはピッタリな名前のように思えた。
リンドウは中尉だそうでゴットイーターの中では上の方に立つ者だ。

「あ、これじゃあ4つだな」とそいつは頭をかきながら苦笑いをもらした。
こいつが俺の上官、所属する部隊のリーダー

「ほら、あんまり緊張すんな、気楽にいこうぜ」

無言である俺にリンドウは極度の緊張をしていると勝手察したらしく肩をポンと軽く叩いた。

俺にはあまり嬉しくない勘違いである

「うぜえ……」

小さく言ったつもりだがリンドウには聞こえていた。
ゴットイーターの身体能力は高くそれは適合率の深さで個人差があるらしい。
俺の言葉をきいたリンドウは目を見開いたがそれはすこしの間だった。
リンドウは今度は苦笑いではなく面白そうに声を出して笑った。

「ふははっ……、お前ソーマと良い友達になれそうだなあ」

すると頭の上に何かが置かれた。
手だ、人間の
大きくかさついたリンドウの手である。

「まあ、お互いがんばろうな」

俺はリンドウの手をつかんでおろした。
この男はどうやら頭を撫でようとしたらしい。
一瞬攻撃されると思った俺がバカみたいだ

「リンドウ」
「ん?なんだ、もうそろそろ任務に出発しないとあれだぞ」
「俺ははてめえが嫌いだ、そんな、くそみたいな命令も」

するとリンドウは黙った
言い過ぎたとは、思わない
最初にこう言っとかなければこいつの場合お人好しそうだからダメなのだ
何がダメなのかは自分でもわからないけども
俺は神を殺すための武器をつかむ手に力をいれる

「あーまあ、あれだ」

リンドウへと目線を再び戻すと少し困ったように頭をかいている様子が写った。
こいつは困ると頭をかく癖でもあるのだろうか。

「とにかく死ぬな、これだけは……絶対だ」
「……てめーに言われることでもねえよ」

お願い事みたいたその命令におれはやはり好きになれそうににない。
よく考えれば年下の新人にこんなことを言われ怒らないとは珍しいやつだ
普通のやつだったならぶちギレているところだろう。

「とりあえず任務を終わらせるぞ」

リンドウはため息をついた
その溜め息の理由も意味も知らないし知る必要はない

「あーうざってえ」

とりあえず冷たかった指先がいつもの体温に戻っていたので戦果はきっといい結果がでるだろう





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