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 7

あの後探索部隊が組まれたが今のところ結果は何も出ていなかった。
日を追うごとにエントランスの空気は重くなってゆき第一部隊のメンバーもそれは変わりなかった。
その様子でどれだけリンドウが周りから慕われていたかが分かる、みんなリンドウの生きての帰還を待っているのだから。
しかし、あの重い空気は俺にはあまり合わず疲れるのでエントランスには極力行かなくなっていた。

「おーい、トウー」

呼ばれた名前に顔を上げると訓練室の外から窓を開けてこちらに手を振るコウタがいた。
今は夜の11時を指しており、こんな時間にコウタがここに来るのは珍しい。
何か話したいことがあるのだろうと、訓練を終わらせ首にかけていたタオルで汗を拭きながらコウタの元へと向かう。

「今日も訓練?いつも頑張るねトウは」

そう言うコウタの声はいつものように元気はなく顔は少しやつれているようにも見えた。
第一部隊のメンバーはここ最近コウタのように皆やつれた顔をしている。
俺はそんなやつ等の顔をあまり見ていられなくて困っている、元気を出させようにも俺には難しいことだ。

「うるせえ、コウタこそどうしたんだよ、珍しい」

訓練室から出るとコウタは缶ジュースを俺に手渡した。

「どうぞ」
「どうも」

休憩用に設けられたイスに座り、プシュッと音をたて缶ジュースを開け口をつける。
思ってた以上にのどが渇いてたようで口を離すと残りはもうほとんど残っていなかった。

「で、なんだよ」
「んーなんだろうな」

コウタは自分の分の缶ジュースを開けると一口飲んだ。

「これから一体どうなるんだろうなあ…」
「どうにかなるだろ」
「でも、ほら今バラバラじゃん…」

第一部隊で問題なのはサクヤとアリサだった。
アリサはリンドウの事件から病室にこもりっきりでいつ復帰するかも不明であるしサクヤは寝ていないようで目の下にはいつも隈がある。
ソーマは色々と思うことはあるようだがいつもより元気がないようには見えるもののあの性格なのでよく分からない。
今この部隊には誰もまとめる人間がいなく部隊といって言いのだろうかという状態だった。

「これでバラバラのままならそれだけのチームだったってことだろ」
「でもっ……」

コウタは納得できないように言った。

「まだリンドウの捜索が止まったわけじゃない、先のことなんてわかんねえんだよ」
「うぅ…トウー…」

コウタは悔しそうに泣きそうに声を出した。
そんなコウタに俺はジッと見て言う。

「泣くんじゃねえぞコウタ、俺たちは泣いてる暇なんてねえだろ」
「泣く暇くらいあってもいいじゃんかよ」
「ねえよ、ねえだろ」
「はあ、トウはきびしー」

コウタは眉を下げて苦笑いをした、それはきっさより幾分かマシな素直な笑いだった。
俺はそんなコウタの表情に内心ホッとする。

「…でも、そうだよな。俺たちはこれから強くなることしか……出来ないんだよな」
「当たり前だ、リンドウが居なくなったら居ないでその分俺たちが狩れば何も問題はねえだろ」
「俺たちがリンドウさんレベルくらいに強くならなきゃいけないってこと?果てしないね」
「全く果てしなくねえだろ、すぐに超えてやる」

俺は拳を作ってコウタの前に出す。
コウタはその拳を見てニヤリと笑う。

「そうだね、一瞬だ」

コウタも拳を作って俺の拳にゴツンと当てた。



俺は缶ジュースを飲みきり壁にかけられた時計を見た。

「あー12時過ぎてやがる」
「まじ!?俺まだ報告書書いてないんだよ、やべー!」

コウタも急いで缶ジュースを飲みきるとゴミ箱に捨てる。

「お前…リンドウを一瞬で越すとか言ってそれかよ…」
「いいの!これからこれから!」
「本当かよ…まあ部屋に帰ろうぜ」
「本当本当!」

戻る途中に医務室の前を通ると扉の張り紙には面会謝絶と書かれている。

「あーあ、アリサ早く元気になんないかな、トウと2人でもいいけどやっぱり3人じゃないとな!」

その張り紙をコウタも歩む足は止めないままチラリと見てから言った。

「それはこっちのセリフだろ」
「なんだってー!」

アリサ、早く戻ってこないと俺たちはどんどん進んじまうぞ、と医務室のほうへと語りかける。
アリサのために止まっていることなんて出来ない。アリサもそれはごめんだろう。
俺たちはもう強くなるしか出来ないのだから。





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