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バンッ!バババン!
訓練用に作られたダミーアラガミ弾を次々と撃ち込む。
モーションで動くアラガミに射程距離を維持しながら弱点を狙い撃つ狙撃の練習をしていた。
戦闘では接近での攻撃の方が得意のため剣を常に使いがちだが両形態を使う事ができる新型である自分がいつまでも接近形態だけに頼りながら戦い続けるのは嫌だった。
最後の一体を倒したところで息をつく。
接近の時は自然と体が動くようになってきたが銃形態を使うとなると動きが今一ぎこちなくなってしまう。
しばらくの間はこれが課題だな、と少し離れた所に置いておいたタオルを取り汗を拭きとる。
端末機で時間を確認するともう夕方だった
今日はこの辺で切り上げようと神機を返し自室へと足を動かす。
この後はどうしようか、と考えていると先に黒髪の男と立ち話をしているリンドウが目に入った。
それにリンドウも気付いたのかこちらを向き手を振った。

「お、いいところに」

リンドウと話していた男もこちらに目線を向けた。
黒髪の青目、たれ目、ひょろひょろとした男
ソーマの透き通った青とは違い深い海のような色をした瞳だ。
見覚えのない男だったがそいつの腕にはゴッドイーターの証である腕輪がつけられている。

「お前を探してたんだよ、まあ今はちょっと立ち話中だったが」
「はあ」

隣の男と目が合った
その目は綺麗な色はしているが生気のない、あまり見ていたくない瞳だった

「まあ、とりあえず紹介な。こいつはシキ、鶴音シキだ」
「眩しい子だねえ、んー・・」

シキという男は目を細めじっくりと舐め回すように俺を見る。

「こいつは夜勤だから滅多に会えることないからレアだぞ」

夜勤のゴッドイーター
夜になると人間と同じく眠るアラガミもいれば眠らないアラガミもいる
そんなアラガミの対処、夜中の緊急時の任務を担当する神機使いのことだった。

「シキ、この眩しいやつは鳥場トウ、新型だ、ちなみに口が悪い」
「へー新型かあ。口が悪そうな見た目だしねえ」

あまり興味なさそうに言ったシキは「ううーん」と唸る。
そして少しの間黙った後シキは薄っぺらい笑みを浮かばせて言った。

「君、ごみ溜めの人じゃない?」

俺は驚いて咄嗟にそいつの顔を見た。
ごみ溜め、俺が住んでいた居住区の通称だった。
そこに住んでいる奴らが皮肉を付けてつけた名前だ。
正式の名はIF76区、一般の奴らは知らない、行くところがない人間が詰めに詰まった場所

「その反応、当たりだ?」

シキは笑みを深くさせる
その笑みにゾクリとした。この男、好きにはなれない
ゆったりした話し方の男だが、ただそこに居るというだけなのに恐怖を感じる、隣にいるリンドウは感じないのだろうか。

「俺もそこの出身なんだよねえ」

その言葉に納得した
こいつの瞳の深さの気持ち悪さ、そうゆうことだ
あそこの居住区にいた奴は皆、そんな瞳をしていた
そしてさらにわかった。
こいつの危険さは、そうゆう危険な場所にいたヤツにしか察知できない特有の危険さなのだ。
気を緩ませたら即座にナイフを突き立ててきそうな、そんな空気を纏っている。

「なんでわかった?」

居住区ですれ違ったことでもあったことがあるだろうか?
過去に会ったことがあるなら忘れなさそうな男だが

「纏ってる空気がね、そんな感じだったから」

俺は黙る、そんなことで分かるものなのか?

「君は感じたことない?ここにいる人の自分の違いの差」

目を細め笑みは浮かばせたまま諭すように言ってきた

「感じていないなら嫌でもこの先知ることになるし、感じているならこれから更に知ることになるだろうね」

この男はどんな思いでそんなことを言っているのだろうか
この男は一体、俺は無意識に拳を握っていた。






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