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「・・俺がマジメってよりお前がダメなんじゃねえの」

講義の度にコウタは見事に熟睡している、夢まで見てみて寝言を聞くのはもう毎度のことだ
サカキが起こす努力はするが結果はいつも出ていない

「えー、でもさあ、アリサもだけどトウ講義の度にちゃんとノート持ってきてるしペンは常備だし、メモもよくとってるし」
「あなたが神機使いとしての自覚が無さすぎってだけじゃありませんか?」
「そうかー?でも、博士の話は何回聞いても眠たくなるんだよなあ」
「聞こうって思ってねえだけだろ」

エントランスまでへの道を3人で歩く
始めはコウタとの2人だったが新たに入ったアリサも加わり会話の内容は前よりもちゃんとしたものになっていた。

「じゃあトウは博士の話す内容に興味があるってこと?」
「俺は別に、知っておいた方が良いと思ったんだよ」
「ほら、マジメー」
「ちげえ」
「・・ん?あれ、どうした、アリサ」

俺の後ろを歩いていたコウタが立ち止り俺も足を止め振り返る
いつも一番後ろを歩くアリサはノートと筆記用具を両手で抱きしめながら立ち止っていた。

「・・あ、あの」
「うん?」
「・・私って、ダメなんでしょうか」
「え、いやいや、どこが?」

コウタは反射的に答える
アリサは筆記用具を抱きしめる手に力を入れ顔を隠すように顔を俯かせた。
ノートは少し折れ曲がってしまっている

「・・やっぱりなんでもありません、行きましょう」

言葉の割には顔は俯かせたままで足は動こうとしていない
さっきまではコウタに強気な態度をしていたくせに忙しいやつだ
コウタはそんなアリサを見て数秒黙った後、俺をチラリと見た
あ、なんか来る、そう思った瞬間

「アーリサッ!」

コウタは明るく名前を呼ぶと俺に勢いよく俺の肩に腕を回した。

「こいつ、トウはお察しの通り口悪い男で見た目不良のくせにマジメなやつ。んで俺は、優しくてーイケメンでー気がつかえてージェントルメン!」
「はあ・・?」

アリサは顔を上げ口をポカンとさせていた。
そんなアリサにコウタはニコニコと話し続ける

「んで、アリサについてはー・・、まだまだ仲良くなりきれてないからアリサのいいところなんて全然言えないんだけどさ」
「ほら、そんなの一緒に仕事してるうちにわかってくるし、周りもまだ何もわかってないだけだから、えーと・・」

言葉が見つからないのかコウタは黙ってしまう
なんとなく、言いたいことは分かった
コウタの言うコウタの長所は少しだけ合っている

「アリサ、ノート見せてみろ」

コウタの優しさにつられ俺もまた、らしくない優しさを使おうとするのだ

「なぜですか?」
「いーだろ、見せろ」

そう言ってアリサの目の前に手を出すとアリサは嫌そうではあるがノートを俺に渡す。
そのノートを俺は折れ曲がっていたところを直した後ペラペラとめくる

「これ、今度俺見たいから見せてくれ」

講義は何回か一緒にしているし、俺の近くでノートをとっているので、自然とノートの中身が目に入る。
なのでどんなノートなのかは分かっていた

「は?今見ているじゃありませんか」
「お前のノートの良い所を後で写させてくれってことだ」

隣で開いたノートを覗き込むコウタは書いてある内容がよくわかないのか無言のままだった

「コウタもだからな」
「えっ!?」
「このノート、俺より解りやすいし字もきれいだ、ポイントもちゃんとまとめてあるからな」
「え・・」

ノートをぱたりと閉じてアリサに返す、アリサはじっとこちらを見ていた
目が合い、俺は気恥ずかしくすぐに逸らす

「あー!わかった!3人で勉強会ってことだ!」
「コウタがあまりにもバカすぎると後々面倒だからな」
「バカって言うなよ・・」
「いつまでも新人って訳じゃねーだろ」
「・・・そうですよ、コウタ。後輩ができてもバカのままでいるつもりですか?」
「なっ・・」

再び会話しながら歩き出す
アリサの表情は仮面が壊れ、眉を垂らして笑っていた
俺たちは自然と先ほどの一列ではなく横に並んで歩いていた

「そーだよなー、アリサも新人で俺たちも新人。ほとんど一緒じゃん」
「・・いや、違うような気がしますが」
「いやいや、長い目で見たら一緒だって!同じ年度、同じ季節だし」
「俺が入ったとき先輩面したヤツが言うことじゃねえだろ」
「こら!トウ、それは内緒だって!」
「・・色々ドン引きです」
「これから一緒にがんばってこう!おー!」

コウタが拳を握り腕を上げた

「一番勉強頑張るのはお前だけどな」
「全くです」







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