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「なあなあ、第一部隊リーダーさんよー」
周囲にアラガミいないかと気配を気にしながら前を歩くリンドウへと話しかける。
「なんですかね、第一部隊所属の口悪少年」
もう何回も呼ばれているそのあだ名に俺は抵抗することが無くなっていた。
ふざけてコウタやサクヤも使うようになり毎回抵抗するのもつかれ、その口悪を否定するのもあまりできないからだった。
「アリサってヤツ。演習は抜群の成果を出しているらしーですが、ってことは実戦はまだまだ経験ねえってことですよね、いーんですか、そんなヤツ。現地に一人にして」
するとリンドウは足を止めこちらへと振り向く
「・・意外だ」
わざわざ言葉にしなくても顔に書いてある。
「あ、怒るなよ?怒るなよ、トウ。俺はいい意味で言ってんだ!」
「別に怒ってねーですけど」
「お前の顔が怒ってるんだよ!」
顔に出てるのはあんたの方だろ
それに俺はそこまで感情が豊かではないしそれが表に出ることもあまりない筈だと思っている
「お前、意外とわかりやすいからなー?」
俺の思っていたことを察したのかリンドウは顔をジロジロと見ながら言った。
色々と見抜かれそうな気がして顔をそむけるとリンドウは小さく笑う。
「んじゃ、アリサ迎えに行って来い」
「・・は」
「ほら、さっさと行け!」
「すると、あんたが一人になるじゃねえか」
スルッと自然に出た言葉だった。
居住区にいた頃はつねに一人が当たり前で、他人についてなんて考えるなんてことはしないのが当たり前だった俺が言うのはおかしいことではあるが、間違えていないと思った。
もし自分が殺す側であった時、複数で固まってるやつを狙うよりも一人で単独行動してるやつを殺す。
この仕事でのアラガミ討伐に関しての基本もコレだ。
しかし、自然と出た言葉とはいえ俺がこんなこと言うとは
少し前の自分と今の自分について、思っていること、考えていること、それについて深く深く考えていけば自分の中のいくつかの矛盾にぶつかる。
その矛盾は、今は、見て見ぬふりをする。
「・・おっまえー、俺がそんなに弱いと思うか!?」
数秒の沈黙の後にリンドウは言った。
言葉とは裏腹に嬉しそう憂な声、表情だった。
リンドウは神機を手にしていない方の手で俺の髪を力強くグシャグシャとかき混ぜた。
「はあっ・・!?」
「お前、悪そーなヤツだけど本当、ただの良いやつなんだよな。本当困るわ」
あまり困ってなさそうに言うリンドウ
俺はいい奴ではない、一般的に言うならばただの悪者だ。
そんな俺のことをそんな風に言うのはこいつくらいである
何故そんなに嬉しそうにリンドウが言うのかわからず、かき混ぜるから撫でるに変わったその手を払いのける。
「じゃあ一緒に行くか・・って来ちまったな」
リンドウの視線が俺の後ろにあり俺も後ろへと振り向く。
「ご迷惑おかけしました」
また、仮面のような表情を張り付けたアリサがいた。
今度は俺の顔を見ても表情が動くことはなく、色々な意味で落ち着いたようだった。
「よーし、じゃあ、索敵再開。前は俺、真中はアリサ、後ろはトウで一列で動く、いいなー」
「了解」
「了解しました」
リンドウはアリサに対して深いことは何も言わずただ指示をし俺たちの返答を聞くと頷いてすぐに動き出した。
「アリサ、そういえば雲の動物は見つかったかー?」
討伐対象のアラガミは未だ見つからずただ歩き進んでいるとリンドウは歩む足を止めぬままアリサへと話しかけた。
「・・ウサギを」
「いたぞ」
アリサの言葉を遮り俺は神機を剣形態から銃へと変形させながら言う。
討伐対象のシユウはまだこちらに気付いておらす、ズシンズシンと音を立てどこかへとのん気に歩いている。
「了解だ。2人とも無茶はするな、死ぬなよ」
リンドウはそれだけ言うとシユウの元へと走った
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