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さて、やっとのこと本日現場復帰だ。

傷の痕は残ってこそいるが痛みもなく完全に塞がっている、討伐任務に支障が出ることはないだろう
ただ戦闘においての勘が鈍っていないかが心配である
また怪我をしてしばらくの間安静に、なんてことがもうコリゴリだ。
久しぶりの外の空気、空に気持ちよく感じながら今日のミッション内容が頭の隅でチラついた。
今日のミッションは例の新人、アリサと一緒である。
リンドウもいるとはいえ、久しぶりの討伐任務で新人と一緒なのだ。
下手に何かヘマをしないように気をつけろ、と自分に言い聞かせ息をゆっくり静かに吸って、吐いた。

任務地は贖罪の街であり自分の初任務の時を思いださせた。
あの時ほどではないが手汗を掻いている、手も冷たかった
現場には到着しており、ヘリでこちらに向かっていると時からアリサからチラリチラリと視線を感じていたが話しかけてくることはなく、俺もまた話しかけなかった。
自己での神機メンテナンスを終わらせ、神機を肩に担ぎ空を見上げる
落ち着いて空の、雲の流れが見れている。
大丈夫だ、やれる
空は曇ってはいるがその奥に青が見えた


「今日は新型二人とお仕事か、足を引っ張らないように気を付けるんでよろしく頼むわ」

リンドウは俺たちとは別に後から来ると、またいつものように笑みを浮かばせながら言った

「旧型は旧型なりの仕事をしていただければと思います」

俺の隣に立ちキッパリと言い放ったアリサを横目で見るとアリサもこちらをチラリと見ていたようでパチリと目があう
アリサは少し焦ったような顔をしてすぐ前へと視線を逸らした
少しムカついた
さっきからなんなんだ、一体こいつは
俺が一々気になるなら言わなければいいだけの話だろうに

それに別に今アリサが言った言葉に特に気にしていなかった

旧型は旧型なりに新型は新型なりに

それは当たり前なことだろう
自分にできることをやる、そんなのは当然のことだ
・・そうゆう意味じゃねえのか?

「はは・・ま、せいぜい期待に添えられるようにがんばってみるさ」

そう言ってリンドウはアリサの方に手をポンッと乗せようとした、が

「キャアッ!」

手が肩に触れたか触れていないか、そんなギリギリの所でアリサは悲鳴を上げ勢いよく飛び退いた。
これにはリンドウも驚いたのかポカンとした表情をしている。
アリサは様子がおかしくこちらを見ることはなく頭を押さえていて混乱しているようだった。

「リンドウ、さいてー」

柄ではないことは分かっていた。

「な・・っ!?」
「今のはアリサの心の声を代弁しただけですよ」

「・・トウ、俺はなあ、アリサの緊張を少しでも解いてやろうと・・」
「ソレ、なんて言うか知ってます?」
「ん?」
「セクハラってやつですよ、セクハラ」

目を細め呆れたように言えばリンドウは俺とは逆に目を開き

「んな訳あるか!」

と叫ぶように大きな声で言った。
アリサを方をチラリとみると少しは落ち着いたのか手は頭にあてたままポカンとした表情でこちらの会話を見て聞いていた。

「自覚ないって・・」
「ああ・・もう!!」

リンドウは頭を強くガシガシとかく

「アリサ、悪かったな。変な意味でやったわけじゃない、本当だぞ?」

真顔で、でも必死に早口でリンドウはアリサに言う。

「本当だからな!!」

「あ、はい」

余りの必死さと気迫に押されてアリサは反射のように頷いた。

「よし・・」

リンドウは満足げに頷いた後、腕を組み少しの間考え込んだ。
そして天へとまっすぐに指をさした。

「よし、アリサ。混乱しちまった時はな、空を見るんだ」

ニッと笑って言うリンドウ

「そんで動物に似た雲を見つけてみろ。落ち着くぞー」

「見本はトウだな、気が付けば空を見てる」
「別にいーだろ」
「悪いとは言ってないぞトウ君」

別に混乱しちまったからしてる訳じゃねえし
しかし空気は先ほどの変にギシリとしたものが無くなり緩やかになっていた。

「それまではここを動くな、これは命令だ」

空を見上げる気配がないアリサに念を押すようにリンドウは言った後「よいしょ」とおっさんくらい言葉を使って神機を肩に担ぐ

「合流はその後、じゃあ行くぞトウ」

そう言ってリンドウは一人任務開始地点へと降りた
現地に新人を一人置いていくのはどうかと思うが、これも一応リーダーからの命令だ
しかし納得はできねえな、後でリンドウに言ってみよう

しょうもなく、という雰囲気を纏わせながら空を見上げるアリサを少し見た後、俺はリンドウの後を追うため久々の討伐任務地へと足をつけた。





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