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「よく、そんな浮ついた考えでここまで生き長らえてきましたね。」
「・・へ」
空気がピシリと固まった
コウタもまさかそんな返事が返ってくるのかと思ってはいないかったのか小さな声を出してだけで何も言えないで固まっている
「彼女は実戦経験こそ少ないが演習では抜群の成績を残している。・・追い抜かれないよう精進するんだな」
へえ、抜群の成果
まだ自分も入りたてではあるがだからといって、負けてはいられない
さっさと傷を治して復帰しなければ
「アリサは以後リンドウとついて行動するように、いいな」
「了解しました」
「オレ、藤木コウタ!よろしく!ロシアって寒いんでしょ?・・あ、でも最近は異常気象で暖かくなってんだっけ」
リンドウとツバキが引き継ぎをするため去って行った後、コウタはこればかりにと話しかける
先ほどの冷たい発言を気にせず押せ押せなコウタは相変わらずだ
どうやらアリサは髪を触る癖があるらしくコウタが話しかけている間もずっと触っていた
「ほら、トウも自己紹介!」
名前を呼ばれたことに「ん、」と返事をすれば「自己紹介!」と言われ、とりあえずアリサに目線を向け何か言おうと言葉を探す
「・・どーも」
あ、そうだ。
一応俺はこいつを見てやってくれと頼まれているのを思い出した
言い逃げされたとはいえ同じ部隊ではあるし全く気にしない訳にはいかない
しかし、自己紹介って何を言えばいいのだろうか、コウタほどのコミュニケーション能力はない
「あーもう!名前!名前を!」
あ、そうだ、名前
「あ?あー・・鳥場トウ、新型だ」
「・・新型なんですか?」
さっきまではどうでもよさげな顔をしていたのに新型と聞いた途端にパッと表情を変え俺と目があった。
さっきまでは俺を見てたといえば見てたのだが俺の目は見てはいなかった。
「そうそう!でも、今怪我して任務行けなんだよなー」
「ダサいだろー」と言いながらコウタは肘で俺の腰をグリグリとしながら笑う
アリサがやっと反応らしい反応をして嬉しいのは分かるが、余計なこと言うな、とコウタを横目で睨むが気付いているのか気付いていないのかヤツは無視だ
しかしその言葉を聞いたアリサは無表情に戻る
「新型なのに、怪我でミッションに参加できない・・?貴方、神機使いの自覚あるんですか?」
「・・は」
いきなりの発言にうまく反応できない
「貴方はゴッドイーターとして、さらには新型としての自覚が足りないんじゃないんですか?・・がっかりです」
それは無表情でありながらも声は心がこもっている
心底残念なように、呆れたように
確かにアリサは正論だ、俺はおマヌケだったのも確かだ
しかし言いたいこともあった
慌てた様子のコウタを無視し俺は口を開く
「別に俺にがっかりすんのは自由だけどよ、そんなに新型新型って威張るのは違うんじゃねーの」
するとアリサはまた無表情から顔が動いた
驚いたような反応に困るような顔だ
それに満足した俺はさっさとこの場から立ち去るとする
アリサが何かを言う出す前に俺は最早口癖となった「うぜえ」を言って背中を向けた
今回はその言葉にしっかりと感情を込めて
ソーマと目があったが向こうはすぐ逸らし俺もまたさっさと去りたかったのでそのまま足を動かす。
「ちょ、ちょっとトウ!」
あとは任せたコウタ
お前のコミュニケーション能力に期待しておく
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