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「お?なんだトウ、俺の腕が好きなのか?」

ニヤニヤしながら言うリンドウに俺はパッと手を放す

「そんな反応も傷つくけどなー」
「うっせ」

頭を撫でられたことによって顔が赤くなっている気がして体の方向をリンドウがいる方とは反対の向きに向ける

「んじゃ、俺行くわ。大人しくしとけよ」

そう言って伸びをながら「さて、楽しいお仕事だ。」と呟いた後、リンドウはイスはそのまま出て行こうとしたがピタッと動きが止まりこちらへ振り向いた。

「新人のこと!頼んだからな!」
「な・・」

「嫌だ」という前にリンドウは医務室から出て行ってしまった
見事な言い逃げであるし逃げ足が速すぎる

「うぜー・・」

布団を頭まで潜り目を瞑り呟く
先ほどまでの撫でられた頭の感触がまだ残っており変な感じだ
嫌いではない、と思う自分が恥ずかしい


「お、ソーマじゃねえか」

医務室に出た後すぐにいたのか小さいが聞こえるリンドウの声
その相手だと思われるソーマは声が小さく聞こえはするが何を言っているかはわからない

「ついでだ、見舞い行っとけよ」

いやいや、こんなダセェとこは見られたくねえよ、と入ってくんなよ、と心の中で訴える
怪我して助けてもらったのはソーマだが、だからと言って見られたくもないし平気でもない
リンドウに見られても確かにいい気はしないし嫌だがソーマほどではない
理由はわからないが・・

「んーだよ、冷たいやつだなあ」

そうリンドウの声が聞こえた後会話は終わったのか足音が遠ざかって行った
どうやら、ソーマは来ないらしい
ほっと息をつくが少し複雑な気分だった、その気分の理由もわからなかったが




あれからこのまま医務室待機であると久治朗ときん子に餌をやれないことに気づき前ほどは痛まなくなった背中にこれなら行けるだろうと軽い考えで自室に戻った結果、医務室に定期的に来る医者にとんでもなく怒られた

俺にとってはそのうち治る傷よりも久治朗ときん子の餌やりの方が重要だった訳だが、医者にそれは関係ないらしい
仕方なくあれからもちょくちょく見舞いに来るリンドウに久治朗ときん子の餌やりに頼んだのだった
そりゃあ、部屋にリンドウが一人勝手に入ると考えると我慢もギリギリの状態だが久治朗ときん子のことを考えればそうもいかない
言ってしまえば怪我をした自分が悪いのだ



そして三日後、合計四日間医務室で過ごしていた。

医者が言うには他の神機使いより少し傷の治りが遅いらしい、と言っても普通の人間からすれば早いわけであるが。
出歩いては良いらしいが任務はまだダメらしい、自分はもう全然良いと思うのだが
ダメダメじゃねえか、自分と自分に呆れながら青く薄い、いかにも病人ですな服からいつもの制服に着替え医務室を出る。
やっとのこと医務室から出れた俺が向かうのはエントランス
どうやらリンドウの言っていた新人が今日来るそうで紹介するから来いとのこと
同じ新型で同じ部隊
気にはなるが本音、今で結構精一杯の俺に新人のことを気にする余裕はない

早く、強くなりてえ
誰にも迷惑がかからないように
情けないことだがそんな想いで俺はいっぱいいっぱいだった。






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