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「あー、えーと、本日も素晴らしい任務日和だ。全員生きて帰ってくるように、以上」

先ほどの慌ただしい食事も終わりなんとかヘリの搭乗時間を間に合わせた俺たちはすでに疲れかけながら任務地の現場にいた
リンドウの顔も少し疲れていて命令も適当である
いや、それはいつものことかもしれないが

「え、それだけ?」

腹をさすっていたコウタが適当な命令のリンドウにツッコむ

「いつものことじゃねーか」
「一々ツッコんでたら身が持たないわよ」
「・・・くだらん」

今日は湿気のせいか空気が纏わりつくなと上を見上げると見事に曇っていた
湿気がある日はダルイなと自然と眉間に皺が寄る

「まあ、今日のこの4人は初の面子だがいつも通り仲良くやれってことで」
「あれ、そういえばリンドウさんは?」

するとリンドウは数秒黙った後少し困ったような表情をして言った

「俺はちょいと、この後お忍びのデートに誘われててな。今から働くのはお前たちだけだ」

どうせそう言って俺たちには言えない隠し事の仕事だろう

「ふーん」

心のこもってない適当な返事をすると隣にいたコウタがいきなり肩に腕をまわしてきた

「いやいや、リンドウさん。そのデートの女の子紹介してくださいよ!」

するとリンドウはわざとらしくニヤリと笑うとポケットからタバコを取りだしその中の一本に火をつけた

「お前にはまだ早いと思うぞ」

一服したあとにまたニヤリとしてその一言だ

真意を考えればリンドウのような立場のやつが俺たちに言えないような仕事ならばコウタにはまだまだ早いのは当たり前だがヤツがそれを理解しているのかはわからない

「えーリンドウさん、ケチ」
「おいおい、ケチって・・」

「・・おい、時間」

ソーマが会話を遮り言った
するとリンドウが慌てて端末機で時間を確認しまだ余裕があったのが安堵のため息をついた

「仲良くするのはいいけどまたさっきみたいに時間に余裕がなくなっちゃうわよ」

苦笑いしながら言うサクヤにリンドウは頭をかきながら「すまんすまん」と少し笑いながら謝った

ピピピ

最近多いこの端末機の着信音の発生源はまたリンドウであろう

手に持ったままだった端末機の画面をジッと見たあとリンドウはポケットに端末機を閉まった

「早く来ないと拗ねて帰っちまうとさ。 ・・たくっ、せっかちなヤツだ」

ということは任務内容はアラガミの討伐・・?
しかしアラガミ討伐なのに俺たちに隠す意味はあるのか

「俺はそろそろ行く。 命令はいつも通り、
死ぬな、必ず生きて戻れ だ」

今から仕事をするという真剣な顔にリンドウは戻るといつも通りのご命令を言った

その命令を受け入れたはいいが俺は相変わらずそれがあまり好きじゃなかった

「自分で出した命令だ・・精々あんたも守るんだな」

その秘密の任務とやらの内容を察しているのかソーマが珍しく応援の言葉を吐いた

「・・ミニトマト、次は食えよ」



そして本日何回目かの数秒の沈黙

「ぶふっ」

今回も同じく始めに吹き出したのはリンドウだった

「いやいや、なんでそれを今言った!」
「ソーマ、トマト気にしすぎでしょ!」
「そんなにミニトマトが好きだったのね・・」

それから広がる大きな笑い
自分もまた笑ってしまい頬の筋肉が痛い
先ほど久々にこんなにも一日に笑ったのでもう表情が動くことはないと思っていたがそうでもないらしい

「・・ッチ」

ソーマはまた変な事を言ってしまったことに気づいたのか顔を赤く染めこちらに背中を向けると強く舌打ちをした


「・・リンドウにだけに言った訳じゃねえ」


「え、そこ!?」


背中を向けたまま言うソーマに爆笑しながらも突っ込むコウタ

「もうソーマ、これ以上何か言うな。な?」
「ソーマ、そこじゃないのよ」
「・・ッチ」

その様子に俺はまた笑いながらも端末機をポケットから取りだし時間を確認する

端末機が表示する時間に俺は頬の筋肉が下がる


「任務開始時間すぎてんじゃねえか」


奴らはあんなにも笑ってたくせに俺の声は聞こえたらしく一瞬にしてその場が静かになった







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