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雨が降り始めた。小さい雫が降り落ちる。
濡れて風邪などはひきたくないためここはいつもより早く切り上げることを決める。
目の前にいる人間にガラスの破片を降り下ろした。



気がつけば血だらけの自分に舌打ちをする。
血のせいで体はベタつき鉄臭い。
早く帰りたいが家にはシャワーがない。

雨が少しでも血を落としてくれるよう走らず歩いて家に向かうことを決める。
とんでもなく狭い家だが俺にとっては雨風防げる生きるためには大切な場所だ。

さっきの人間から奪った物を確認しながら自分の家へと足を動かす
今日三人の人間から奪った金の合計は1600fc
他は日持ちしそうな乾いた食べ物が何個か
これであと数日は生きれると今日の戦利品をポケットに突っ込む
人を刺し殴り、最悪殺していても自分が手にできるものはこんだけで相変わらず、くそすぎて笑えた。

周りからの視線をいくつか感じ再び舌打ちをする。
大体、物をもっている俺を狙っているか怯えているかの視線
治安の悪いIFー76居住地区では明日を生きるために人が人を殺しあうのも少なくはない。
この死んだ死体も多くはないが食うやつもいる。
俺も何度か口にしたことがあるが本当に崖っぷちじゃなければやりたくない。
生きることへの執着とその手段
それに手間取っているような弱さがあるならばここでは死ぬ、それは簡単に。
そんなくそな現状はこの居住区で生きるために当たり前なことだ。
他の居住地区はここよりいくつかましではあるが俺たちは此処から出ることはよっぽどにない。
行くところがなく、外に出る勇気もないやつらがこの居住区へと集まる。
俺もまた、そんな奴らの一人だ。

家の中へ入れば久治郎が礼儀正しくお座りをして目の前で待っていた。
5年前くらいに人間に食われそうになっていたところを拾った柴犬
命を助けたということもあるせいか俺になついている
構ってと足に引っ付いてくる久治郎に顎を撫でてやれば尻尾をぶんぶんとふる様子に何処か高ぶっていた心が落ち着いていくのを感じた。

机と椅子、金子がはいっている金魚鉢と久治郎、寝るときに被る薄っぺらい布、それだけで俺の部屋は構成されていた

ポケットから今日の戦利品を机の上にばらまけると、ふと手紙らしきものがおいてあるのに気がついた。
こんな糞な場所ではあるが何故か手紙を配る人間は存在する。
郵便受けもなければ家の鍵もかかってはいない、そうすると手紙をおくためだけに勝手に侵入されるのかとなんとも複雑に感じる。

人生初めての手紙を手に取ると、そこには見慣れたマークがあった。
狼を象徴として描かれたマーク
今時珍しいくらいなちゃんとした紙でてきていた。
何かやばいことやったけなと考えれば思い当たりすぎてなんともいえない。
少し緊張して封をあける。

その手紙がおれの日常を、すべてを変えることになる。






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