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「あ、これ俺嫌い」

そう言って隣に座るコウタがフォークで刺していたものをこちらのプレートに置く

「好き嫌いすんじゃねえよ」

それは丸く赤いもので上には小さなヘタがついている
俗に言うミニトマト

ちなみに俺も好きではないのでフォークにそれを刺しもう片方に座るリンドウのプレートに乗せる

「いつもお疲れさまな隊長にプレゼントです」

続けて俺のプレートにも乗っていたミニトマトもリンドウのプレートに乗せてやった

「いやいや、新人らよ、食いたくないだけだろ」

そう言ってリンドウはわざとらしくため息をつきながらフォークにミニトマトを刺した

おお、食べてくれるのか、さすが

とか思っていたがそうではなくミニトマトを刺したフォークは前進しリンドウの前に座っていたソーマの元へと行った

「・・おい」

プレートに乗せられたミニトマトに今まで黙々と食べていたソーマは手を止め言った

「いやー、血色の悪いソーマにはミニトマトをいっぱい食べてもらわないと」

リンドウはソーマの声を無視し二つのミニトマトを乗せた後リンドウのプレートにも乗っていたミニトマトもソーマのプレートに乗せる

「そうだぞ、ソーマはすぐ怒るからちゃんと鉄分とらないと」
「それ、カルシウムじゃねーの」
「あれ、そうだっけ」
「いや、俺も知らねーけど」

ソーマはチラリと隣に座るサクヤを見たがサクヤは面白そうに笑っているだけだ

「よかったわねソーマ、みんなからミニトマトもらえて」

そう言ってってサクヤは自分のプレートに乗っていたミニトマトをフォークに刺すとソーマの方に向ける

「私のミニトマトも欲しい?」
「・・ッチ」

ソーマはもう諦めたのか俺たちの分のトマトをフォークでグサッと刺し食べる

「あら、残念」

サクヤはそう言うが表情はにこやかのままそのフォークに刺してあったトマトを自分の口の中に入れた





「・・ 好き嫌いとか贅沢な奴らだな」

少し不機嫌な感情のこもった小さな声の一言
ソーマのプレートにはもうミニトマトはなく全部食べたようだった



「ぶふっ」

少しの沈黙の後、リンドウが肩を震わせて笑うのを我慢していたがそれも突破し大きな声で笑い始めた
それにつられて一斉にサクヤとコウタも笑い始める
さらにそれにつられ俺も笑ってしまう

その笑い声にソーマは驚いた表情をするがそれはすぐ消え顔を隠すように俯く
きっとその顔は赤くなっていることだろう


「ソーマがいじけたか!ははは!」
「いやあ、ソーマでもいじけるもんなんですね!」
「ソーマもまだまだ子どもってことね」

周りのやつらがなんだなんだとこちらに視線を向けるがそれはお構いなしの笑いようだ

俺も笑いを止めようと思うがソーマのさっきの一言を思い出すとニヤけてしまう

「おおおお!トウも笑ってる!」

コウタは俺の顔を見ると驚きながらも笑って言った

「笑っちゃあ悪いかよ」
「いやいや、もっと笑うがいいさ口悪少年」

リンドウはそれほどまでにおもしろいのかバンバンと俺の背中を強く叩いてくる

「なんすか、その口悪少年って・・」
「ん?お前のあだ名みたいなもんだ!」
「意味わかねーっすよ・・・・」

「ソーマのいじけ姿も見れてトウの笑い姿も見れるなんて今日はレアな日ね」
「第一部隊全員で飯を食うことですらレアなのにな」

第一部隊全員でこんなにも笑うなんて初めてではないだろうか
ソーマは笑ってはいなくおそらく顔を赤くしているけれど

「おーおー、楽しそうにしてんな第一部隊」

さっと入ってきたのは第二部隊隊長タツミだ

「楽しそうなのはいいことだけどよ、お前らこの後任務なんじゃねえの?時間やばくね?」

本題はそっちだったようで食堂にかけてある時計を指差し言った


そしてまた数秒の沈黙


「・・ああ!」

またもやその沈黙を破ったのはリンドウである

「おい!早く食え!これは命令だぞ!」

他のやつらもハッとしたように急いで飯を食べ始めた
自分も忘れていたが隊長ですら忘れていたのかよ・・と少し呆れながら俺は急いで飯を口の中に掻き込む


顔のニヤけが中々とれず困った









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