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さて、昼食をとらなければいけない

何となく分かっているものの俺は冷蔵庫を開ける
何があるか、なんてことを確認をしないでも分かるほどにやはり冷蔵庫の中身は空っぽだった

「・・なにもねえ」

言うならば入っているのはペットボトルに入った水二本くらいだ
この後は任務があるため今食べておかないといつ飯が食えるかは分からない

最近レーションを食べてばかりだったのでそれもさすがに飽きた
色々な味があるものの結局はパサパサした食べ物で何日も連続で食べているとさすがに食べたくなくなる

携帯端末機で時間を確認すれば丁度昼時だ
食堂には人が溢れているだろう
しかし何も食べずに任務に行けば後々つらいことが想像できる

「・・行くか」

誰も取りはしないのに必死に餌を食べる久治郎を少し眺めた後小さく俺は呟いて部屋を出た




食堂に入るとたくさんの人で溢れていた
もうそれだけで嫌になるが我慢するしかない

・・さっさと飯食ってこの場から離れよう

配給をもらい周りに人のいない席につく

ザワザワと騒がしいこの場所でこいつらは毎日こんなうるさい場所で飯が食えるなと思いながら飯へと手をつける
俺なら飯くらい静かにゆっくりと食べたい

早くこの場から離れるために味付けの薄い飯を俺は黙々と食べる

「あれ、トウじゃん!珍しい!」

名前を呼ばれ顔をあげれば飯のプレートを持ったコウタがいた

「いつも来ないくせに珍しー」

そう言って当たり前のようにコウタは俺の前の席に座りこちらをジロジロと見る

「どうせトウの事だから、飯ぐらい静かな場所で食いてえーとかでしょ」

ニヘラと笑った後コウタはフォークを手に取り食事をし始める
俺はその言葉に否定ができなく「うぜー」と言ってから再び食べるのを再開した

するとコウタは食事をするのを止めこちらを向いた

「ほら、またすぐにうぜーって言う!」
「うっせえ」

コウタはぎゃあぎゃあと一人騒ぎ俺は適当に相づちをつく

「絶対トウ聞いてないでしょ」
「んーあー・・、聞いている聞いてる」
「・・まあ、いいや。それでさー!俺の可愛い妹がさー!」

まあ、いいのかよと心のなかでツッコミながらもう恒例となったコウタの妹自慢に俺は適当に相づちをうつ
相づちをうってないと話を聞いてないだろ、となってまた妹自慢が一番始めから始まるからだ

かっこいいと言ってくれただの、かわいいだの、と

コウタの飯は一向に減る様子が見えない

「お、また珍しい」
「あら、本当」

今度は後ろから声
首だけ振り向くと飯のプレートを持ったリンドウとサクヤ、その後ろにソーマがいた

するとまたその三人は当たり前のように俺の隣やら斜め前に座る

「どうせトウの事だから、飯くらい静かに食いたいとかで来ないんだろ」

右隣に座ったリンドウがコップに水を注ぎながら言う

さっきもコウタに似たようなことを言われ複雑な気分になる

一体俺をどんな奴だと思ってるんだと言ってやりたいところだがリンドウの言っていることにも否定ができない
しかも言ってやったとしてもどんな反応かはなんとなく分かってしまう

「・・そーですよ」

するとリンドウは「ははは」と笑いながら三つのコップに注いだ水の一つ一つをサクヤとソーマに渡す

「いやー、部隊全員が集まるとはさすがだな」

リンドウは一口水を飲んだ後嬉しそうに言うと飯を食い始める
その一口一口は大きく食べ終わるのは早そうだ









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