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リンドウの部屋を出て自室へ戻ろうと早足で歩いていると自動販売機の傍にあるイスに座っているソーマがいた
ソーマは片手に缶ジュースをもっていて座っている姿勢は姿勢は猫背ぎみだった

ちらりと見えた白髪に触りたいという思いが強まりながらもどうせなら飲み物をなにか買っていこうと自動販売機の目の前に立つ
ソーマは自分の存在には気づいているようだがあまり気にしている風には見えない

ここの自動販売機は変な飲み物が多く遊び心で頼めばあとで辛い目に遭うことはもうすでに分かっていた
腰ポケットに入っている財布を取りだし小銭を入れる
選んだのは無難な果汁ジュースはすこし上がった体温には気持ちいい冷たさを持っていた

「ソーマ・シックザール」

話しかけるつもりはなかったはずなのに俺はなぜ声を出してしまったのか
自分でも自然と話しかけてしまうくらいソーマを気になっているのだろうか

ソーマは名前を呼ぶとピクリと体を動かすが視線は相変わらず地面を見つめたままだった

「ちゃんと俺、名前覚えてるだろーが」

ソーマの座る椅子の隣に座り果汁ジュースのプルタブをあける

「お前はちゃんと覚えてんだろうな?」


「・・鳥場トウだろ」

少し間があったためもしかして覚えていないのかと思ったがそうでもないらしい

「おお、わかってんじゃん」

果汁ジュースを一口グッと飲む
果汁ジュースと言っても入っている果汁は1%だ

「・・なんか用か」
「用がねーと隣に座っちゃいけねーのかよ」

隣をチラリと見ればやはり覗いて見える綺麗な白髪
それは見た目からサラサラしていて少し透明感があるように見えた
傷んでカサカサの自分の髪とは大違いだ

「あのよー・・」
「・・なんだ」
「・・なんでもねえ」

髪を触らせてくれないかと言おうと思ったがやはり無理だ
まず自分はそんなことを言う人間ではない

「・・本当に用件がないのか?」
「俺がお前に用件があるようなことがあんのかよ?」

するとソーマは黙り何が言いたげそうな仕草をするが俺には見当もつかない
待っていれば言うだろうかと果汁ジュースを飲む方に集中する

居住区で暮らしてたときは水もあまり綺麗ではなかったためちゃんとした味のある飲み物を飲むのは少し面白い
食べ物も食堂へ行けば渇きものではなく手作りなものが食べれたりと味覚に関しては楽しかった
しかし食堂はたくさんの人が集いうるさいのが難点で数回しか行ったことがなかった

「エリックとか噂についての話があるんじゃねえのか」

やっと話したかと思えばこんな話
今日だけでそのエリックや噂の単語をどれだけ聞いたことか

「なんで?」
「なんでって・・」

ソーマは少し驚いたように視線をあげこちらを見た
するとソーマの耳がチラリと見え片耳だけがピアスが開いていた

「ピアス開いてんだな」
「あ、ああ・・」
「俺も開いてるけどよ、そのうち増やしてーんだよな」

右に二つ、左に一つ

それを開けたのは結構昔の話で新しいピアスを買う余裕もなくずっと同じものをつけている

「ソーマは増やさねえの?」
「あまりその気はないな」
「ふーん」


「・・お前なんで俺に近づいてんだ」
「は?」

ソーマの方を見ればソーマは持っていた缶ジュースを見つめて言っていた

「俺に近づけば死ぬって言っただろ、それに噂も・・」
「じゃあお前誰か殺すために仕事してんの」
「・・は?」

ソーマがこちらに視線を向けたのがわかったが俺は無視をし口を動かす

「ちげーだろ、お前がどんな思いで仕事してんのか知らねーけどアラガミを倒すってことは誰かを生かしてるってのわかってねーの?」

「まずその噂ってヤツ知らねーし」と後付けで言うがソーマは黙りこみ俺はどうすればいいのか困った
俺にはお前の事情なんて知るわけがなくただ時分の考えを言うことしかできない











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