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「あ、あとリンドウさんがなんか心配してたから顔を出してきたら?」
「めんど・・」
「そんなこと言わずに!ほら!行く」

コウタは俺の背中を押し玄関の方へと向かわせる
そこまでして俺をリンドウに会わせたいのか

「ちゃんと行くんだぞ!」
「はあ・・うぜー」

きっと自分が所属している隊の隊長だから新人へのフォローはしないといけないのだろう
面倒見のいいヤツなのは確かかもしれないが俺はあいつとあまり話したいとは思わなかった

しょうがないとリンドウの部屋に訪れればヤツは来てくれたことに嬉しそうに笑った

「お、来てくれたか!」
「俺から見たらあんたは上官になっちまうからな」
「お前のことだから来ないかと思ったぞ」

「よかったよかった」と何回も連呼するリンドウに一体俺はどんなヤツだと思われているのかさすがに気になった
一応リンドウは俺の所属する部隊のリーダーであり自分は入隊したばかりの新人だ
リーダーがもし命令をしたならばそれは自分にとっては一応耳に入れておかなければいけないことであるしまだ神機使いになって日があまりたってない俺は悔しいがどうしても足手まといになってしまう

そう、自分ではわかっているつもりだ

「この前のソーマとエリックと討伐任務疲れたろ、お疲れさん」
「どーも」
「まあ、それでな?エリックとソーマのことなんだが」
「はあ」
「・・お前聞く気ある?」
「あると思うか?」

リンドウは深くため息をついた
そのあとに一人頷き「だよなあ・・」と小さい声で言った

「そうだよな、トウだもんな」
「意味がわかんねーよ」
「なんか心配してた俺がバカみたいというか」

先程もコウタに似たようなことを言われたような気がして少し変な感じだ

リンドウは俺の右肩に右手を置きポンポンと叩くと目を少し細め言った

「まあ、なんとしてでも生きてくれよ?な?」

その時にリンドウの体が近づいたことによりタバコの臭いを感じ眉間にシワが寄る
このご時世にタバコ臭くなるまで吸うってことはそんなに金があり余ってんのか?
あんな吸ったらなくなるもんに金をかけられるとはどうかしてる

「・・うぜー」
「・・あのなあ・・」

今度はわざとらしくため息をつき肩をおとしたリンドウに俺は距離をとる

「タバコくせえ」
「なっ・・」
「あとよー、俺はあんたに言われなくても死ぬ気とかねえから」

俺は生きる手段の一つとしてここに来たんだ
決して死ぬためでもねえし誰かに生きろと言われたいからでもねえ

だけど生きろと言われると変な気分になる
どうせそれは偽善だと言いたいだけだとムカついて、しかしどこかむず痒い
中途半端に暖かいものに包まれるような感覚
そんな感覚が俺は慣れなくどう扱えばいいのかもわからない

「俺は生きろと言われたら生きて死ねと言われたら死ぬような人間じゃねーんだよ」


「お前、強いヤツなんだなあ」

少し間を置いた後リンドウは苦笑いをしながら言った
強いヤツという言葉にまたどこかむず痒く感じ目線をリンドウからそらす

「でもな、これは自己満足でも良いから言っておきたいんだ。俺はそれほど仲間の死は見たくないんだよ」
「ふん、うぜーやつ」

次に言う言葉を言おうか少し悩む
ヤツには意味を理解してくれるのかは不明だが俺としては恥ずかしい

しかし少し悲しそうな顔をしているリンドウを見ると言い過ぎたのだろうかと後悔しないでもない

「あーあとよ・・」
「ん?」
「・・却下は取り消す、それと俺はリーダーの命令を聞いてないわけじゃねえーよ」

言うことを聞いてそれ通りにするではない
ただ聞いている

今自分がどんな顔をしているのかもわからなくて、ここはさっさと去ろうと俺はリンドウがどう反応するか見る前に背を向け部屋を出た






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