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傷は意外と深くジンジンと痛む
血が止まらないのでトウモロコシを切ることは中断し血を止めることに専念する
滴り落ちそうになる血を切っていない方の手で受けながら決して認めたくはない自分の不器用さにため息をつく
今回はよそ見をして切ってしまったが包丁などで怪我をおってしまうのは少なくはない

両手が赤く濡れ何を触るのにも汚してしまう
ティッシュでとりあえず指を押さえながらお湯を沸かしているままだったので火を止めておく

ピンポーン

部屋に響くのは来客の知らせの音

なんてめんどうな
まずいつもは来客なんて来ないというのに何故こんな時に
どうでもいい奴だったら帰れと言いたい

できるだけドアノブが赤く汚れないように気を付けながらドアを開ける

「よお」

来客はどうやら我らがリーダーリンドウのようだ
帰れと言ってやりたいがこいつはリーダーである
そして俺は新人
さすがの俺でも言ってはならないことはわかる

「どうも」

リンドウの後ろに一人知らない奴がいる
ただリンドウについてきただけだろうか
顔はフードを被っていて下を向いているため今一わからないがキレイな白髪がチラチラと見える
癖もなく、ただ真っ直ぐな白髪は柔らかそうで触りたくなる

「いきなりすまんな、少し話をしようかと思って」

それは部屋に入れろということか

「どーぞ」

扉を大きくあけ入れということを見せる
すると後ろからカシャカシャと忙しそうな足音をたてて久次郎が俺の元へ来た
いつもは見知らぬ人が来ると吠える久次郎は今回はそれがなくチラリと見て終わってしまった

俺の元へ来た久次郎が可愛く頭を撫でてやりたい衝動にかられるが手は血で汚れている
血は先程よりは止まったがまだジワジワとティッシュを赤く染めていた

玄関のところで立ちぼうけている二人になんだと目線を向けると二人はこちらをただジッと見ていた

「入らねえのか」
「あ、ああ・・お邪魔する」

リンドウは久次郎をチラッと見たあと部屋に入っていきその後ろについていっているフードの男もまた久次郎を見て入っていった




「で、用件は?」

ソファーに座らせ水を入れたコップを人数分机に置き二人とは対面になる方向に座る

「明日の任務についての話に来たんだがな、その前にあいつのことについて聞いていいか?」

リンドウが指を指している先にはチョコチョコと歩いている久次郎
さっき見ていたし気になるのだろう
ここでは犬を飼っているやつはいないのだろうか

「あいつは久次郎」
「久次郎・・犬ってやつだよな?」
「その他に何があんだよ」

居住区で食われそうになっていた、俺の気まぐれで助けた犬
助けた後はずっと後をついてきて何度も追っ払ったが結局が俺が負けてしまったのだ
今となってはかけがえのない存在となっているが

「・・じゃああの魚は?」

次の指の先にはタンスの上に乗った金魚鉢だった
確かに金魚は飼っている話をあまり聞かない

「きん子」
「・・きん子・・へえ」
「なんか文句でもあんのかよ?」
「いや、意外だと思って」
「・・うぜ」

きれいな赤色の尾をひらひらさせながら泳ぐ様子をボーと見るのが俺は好きだ
えさ代がかかるが俺の毎日の数少ない癒しである

それにしてもさっきからリンドウの隣にいるフードの男はまだ一言も喋っていない
一体ヤツはなんなのだろうか





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