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ピピピピ

携帯端末機から目覚ましのアラームが鳴る
その音に俺はせっかくの休日だというのにアラームを事前に消しておかなかったことに気付く
眠りの邪魔を押されたことにイラつきながらもすぐそこにある携帯端末機のアラームを消すためだけに手を伸ばすのが面倒だ
ほっておけばこのままアラーム音は消えるだろうからこのまま眠りに再びつこう
アラーム音がすこしうるさいが気にしてはいられない、任務で体も疲れている、何より俺は眠い

するとズシリと腹に重さを感じた
この重さは何かが俺の腹に乗った重さだ
俺の腹に乗るやつなど誰かわかりきっている

「ワン」

あまり鳴くことのない久治朗は遅刻するぞときっと鳴いたのだろうが今日は緊急任務が入らない限り休日である
久治朗には悪いが俺は眠ってしまいたい
腹の上で動く久治朗の四本足は重くはないものの気にはなる
しかも睡魔は少しずつ遠ざかってゆく
無視を決め込め瞼を強く閉じると腹の重さがなくなった
どうやら起こすのは諦めたのかとッホとした後に感じるのは何かが近くにいる暖かい空気
そして瞼に生暖かい感触、舐められた
俺は久治朗のためにも起きることを決める

体を起こすと、かまってと尻尾を振る久治朗がすぐそこにいたので顎を触ってやる
最近は帰ったらすぐ寝てしまってばかりだったのであまりかまっていなかった
タンスの上に置いてあるきん子の入った金魚鉢を見て朝ごはんをやらねばと思い金魚用の餌が入った丸い包の蓋をポンッと音をたてながら開ける
一つまみ取り、パラパラと水面に餌を浮かせばきん子は赤くきれいな尾をゆらゆらと揺らしながら口をパクパクとさせて上の方へ上がってきた
そのパクパクと動く口が好きでただジッと餌を食べるきん子を見つめる

金魚の餌や久治朗の餌はよろず屋に仕入れてもらっていて値段も安くはない
ここに来る前は久治朗には適当な餌をやってたがここではちゃんとした金が手に入るようになった今は専用の餌を買ってやれる
久治朗用にドッグフードを久治朗と書かれた皿に半分ほどいれて床に置く
すると傍にいた久治朗は勢いよく餌を食べ始める
餌に集中する久治朗の頭をそっとなでる
食事中の動物には触っていけないというが久治朗は俺が触ることを許してくれている


さて、自分も何か食べようかとキッチンへと向かう
冷蔵庫の中を覗けばこの前配給でもらったでかいトウモロコシの半分が入っていた
その他には沸騰させた水道水の入ったペットボトルが二本ほどしかない
本日の朝飯はもう決まったようなものだ
いつも食事などレーションで終わらせてしまうことが多いため冷蔵庫の中身などもとから期待はしていなかった
食堂へ行くという手段もあるがこの前1回行った時に自分には合わないと思った
ガヤガヤとうるさく人も多いところでの食事は好まない

塩茹ででいいやと、トウモロコシを取り出しラップで包んであったのでそれを外す
水で軽く洗いこのままだとさすがに大きいので適当な大きさに切ることにする
鍋いっぱいに水を入れコンロに火をつけた後、まな板と包丁をまた水で洗い付近で拭く
醤油やバターなどで炒めた方がおいしいだろうが朝飯にそこまでしようとは思わない

包丁に触るのは久々で手元を確認しながらトウモロコシを切ってゆく
すると足元に何か温かい感触を感じ何かと下を見下ろせば久治朗だった
午後は神機をもっとうまく扱えるようにと演習しようと思っていたが久治朗とダラダラ過ごすのもいいかもしれない
本音としてはダラダラと過ごしたいが任務で自分が役立たずなのは許せない
新しく入ったばかりだといって人の任務の足を引っ張るのはプライドが許しはしない

尻尾を振りこちらを見上げている久治朗に愛おしさを感じながら適当に包丁を下す

あ、

と思った瞬間にはもう遅く人差し指から血が出ていた





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