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「あいつよ、ソーマと仲良くできそうだと思わないか」
「ソーマと?」

少し意外な言葉に少し詰まる
次に来るのはトウ君についての口の悪さかと思ったのだ

「ああ、ソーマと」
「ソーマとトウ君・・」
「トウはまあ、口は悪いが良いやつでソーマもそんな感じだろ」

トウについてはそんな詳しく人柄がわかるように接したわけではないけどそれはわかるような気がした
根拠は特になく言うのであれば彼がまとっている雰囲気とでも言おうか

リンドウから聞いた通り言葉使いは良くはなく舌打ちの多い少年
しかしどこか優しさを持つ雰囲気をまとい人を見ることができる彼
不器用さがにじみ出とるとでも言おうか
この時代に生まれたということを表したような人間といえる
ソーマもまた不器用でありながらもとても優しき心を持つ人間で

「確かに似た者同士ではあるわね」

今回入ったもう一人の新人も優しくまっすぐな心の持ち主である
リンドウは二本目のビールを口にしている
そんな様子をまた横から見ながら私は考える

似た者同士というものは仲が悪い場合もあるのではないかと
あんなツンツンした二人が素直に仲良くなれるとはあまり思えない
確かにソーマに仲の良い友人ができればそれほど嬉しいことはない
しかし、想像がつかない 相手があの新型の彼であるなら尚更

「なんかいい仲になるというかコンビになりそうなような気がするんだよなあ」

一旦飲み口から口をはなすと彼は言う

「それにあいつらはきっと、そうゆう人物が必要だ」

「必要ない人間なんていないんだけどな」と付け足すように言うと再びリンドウはビールを飲む

でも、どんなにここでそんな会話をしてもそのうち結果が分かることだろう
近いうちトウ君はソーマとの任務がある
その時どんなふうになるか少し楽しみだ

「ごちそうさん」

リンドウは飲み終わったようで空になったビールをカンッと音を立てて机の上に置く

「配給ビール少し持ち帰る?」
「ん、おー・・どうすっかな」
「リンドウ最近忙しいでしょう、私のとこの冷蔵庫すぐビールでいっぱいになっちゃうのよ」

タンスから紙袋を取り出しそこに入るだけの配給ビールを入れる
これを渡した分だけリンドウはこの部屋に来なくなるかもしれない
しかし渡しておきたかったのだ

「はい、体には気を付けて」
「どうもありがとうございます」
「じゃあ、ほら部屋に帰って。体を休ませるのも仕事のうちよ」
「はいはいっと」

するとリンドウは重そうにソファから腰を上げ帰宅の用意をする
用意といってもソファに座る前に脱いでいた上着を再び着るだけのこと
その様子を見ていると自然に目についたのは任務で傷ついた腕
怪我なんて仕事柄そんな珍しいものではないけど不安にはなる

「リンドウ、貴方周りの人ばかり心配するけど私はそんなあなたが心配よ」

この思いが伝わるようにジッとリンドウの目を見つめ言う
これを言うことで彼に変わってほしいわけではない
これくらいで変わっているならばそれは彼ではない

リンドウは何を言えばいいかわからないようで視線を私から外し困ったように頭をかき小さく言った

「・・・すまん」

その一言で私は十分だった

「それじゃあ、また明日」
「ああ、おやすみ」

リンドウを玄関まで見送り、なんとなく心が幸福感に包まれているうちに眠るとする
ベッドで体を横にし目を閉じるとそこに現れるのは先ほど別れたばかりの彼で

本当バカみたい、と自分自身に言いゆっくりと想いを真っ暗な場所へと沈めた








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