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本当に心底、きれいだと思った

言葉では表すことはできないほど、見惚れてしまうほどに

いつもはこんなにもきれいだったかと考えるが自分の残した過去の記憶には残念ながらあまり夕日というのは残っていない

そういえば空を見上げたのはどれだけ久しぶりか
今を生きることに必死すぎて自分は空すら見上げていなかったのだろうか
そんなに急ぐ必要性もない人生なのに、さすがに自分の情けなさを感じる

「・・夕日がな」

視線を新人の背中から空へと上に移動させる
あの時ほどきれいには見えないが今の夕日だって十分にきれいだといえる

赤くて優しそうだ

「あ?」

新人は眉間に軽くシワを寄せこちらを振り向く
口が悪い新人だと内心苦笑いだ

「夕日がきれいだな、と」

すると新人は再び空を見上げる

「確かにきれいだな」

この任務中に聞いた新人の声という声はなく、ほとんどが舌打ちだったが今聞いた声はは思ったままの気持ちを声に出したものなような気がした
その声は静かで今さっきの口悪も嘘のようだ

「でもまあ、いつものことじゃねーか」

思いがけない新人の言葉に俺は笑った
なんてことだ
こいつはこれまでも何度も空を見上げそのたびにきれいだと思ったのだろうか
昔の俺は夕日の色さえも思い出せなかったというのに
空すらも見上げなかったというのに

こいつは将来有望かもしれないな

もちろん期待していないということはなかった、この支部初の新型でもあるなら更にだ
しかし、これは個人的として興味を持つ

「これからいっぱい育ってくれよ口悪少年、期待してるぞ」

人差し指と中指で挟んだままのタバコを口にくわえ火をつける
深く息を吸い、煙を肺へと流し込みゆっくりと吐く

新型は振り向いたかと思えば少し沈黙したあとに俺にいい放つ

「うぜぇ奴」

また、口悪少年は背を向けた

そいつはよっぽど好きなのかまた夕日を見ているようで
夕日を陽を浴びる新型のまだ見慣れない背中は命を託せる、背中を任せるほどのたくましさはない、しかしどこか安心を思わせる力の持った背中だった

生きてくれよ、口悪少年

これからの期待の星の背中へと声を出さずただ想いをこめて呟いた







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