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初任務を終え疲れたであろう新人は空を見上げていた。
いや、まだ任務は終わっていないが対象のアラガミ討伐は終わったのだ

リンドウは胸ポケットからタバコを取りだし一本を人差し指と中指で挟む
新人の背中をボーと見ながらリンドウは思い出す
自分の初任務の時を


その時の俺は、緊張で手汗がすごく心臓もバクバクと今にでもどうにかなってしまうのではないかという状況だった

手汗があまりにもひどいので何回神機を握り直したことか

アラガミを発見したときはもう自分の身についてなどなにも考えずただ倒すことだけに無我夢中だった
きっとガードもできていなかっただろう
討伐完了したときにはあまりの緊張のしすぎたせいか地面に座り込んだ

立ち上がることさえできずただ中途半端な緊張を落ち着かせるために座り込んだままでいると俺と一緒に任務に出たヤツは俺へと手を差し出し「おつかれ」と言ったのは今でも鮮明に覚えている

今思い出せば、まだ任務は終了していないのにおつかれさまというヤツは少し無防備に感じる
帰投完了するまでが任務である

無事倒せた喜びと生き残れた安心感、それえこれからもこの日常が続くという不安と恐怖
ヤツはそれも知っているかのように笑っていて俺を安心させようとしているのがわかった

しかし色々な感情が詰まり余裕のない俺はそれに笑い返すことはできなかった
今思い出すと軽い笑い話である

ああ、でも、と更に思い出す

夕日がきれいだった

そいつが俺に背を向け空を見上げ「世界は美しいな」と言って
このご時世に珍しいヤツがいるもんだと失礼ながらに思った
この時代この世界を恨むことで生きている人は少なくはない
ましては美しいという奴など滅多にいないだろう

つられるようにそいつの視線の先を追えばそれはそれは赤い夕日が存在していた
今にもとけそうな、赤く優しそうな夕日

夕日はこんなにもきれいだったものかと感動し小さく声をあげる

するとそいつは振り返り再び笑う

「この仕事もいいもんだろ」

そのいいところとはそいつがどこを指しているのは俺が理解しきれているとは思わなかったし初任務だというのにそんなことを言われても答えようがないと思ったが何故か心にはストンと落ち着き、自然とうなずいていた







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